ハラスメントに悩む人へ「逃げることは負けたことにはならない」 ”二つに一つ”の解決策とは?:大愚和尚のビジネス説法(2/3 ページ)
法整備がされても、なくなることがないセクハラやパワハラ。「人間は弱いものをイジメ」ないと生きていけないのか? であれば、そのような世界でどう自分を守ればいいのか? ハラスメントがなくならないという前提に立って、社会を生き抜く心得を大愚和尚に聞く。
それは、「加害者にも被害者にもならない」ということです。加害者当人は、他人を傷つけているという自覚がありません。だから、他人から指摘を受けるか、または自らどのような言動、態度がハラスメントになるのかを知り、普段から気を付けるしかありません。一方、被害者には、2つの選択肢があることを知ってほしいのです。
職場の“闇”と戦うか逃げるか? 正解は――?
1つ目は「戦う」、2つ目は「逃げる」という選択肢です。厳しい自然界に生きる動物達は、常に天敵からの脅威にさらされながら、いずれかを選択しています。どちらを選んでも、そのときにかかるストレスやダメージは小さくはありません。戦って負ければその時点で戦いは終わります。しかし、負った傷が原因で死ぬこともあります。逃げ切れなければやはり、捕食されて死んでしまいます。一方、戦いに勝ったもの、逃げ切ったものは、その後、極度のストレスから解放されて、リラックスできます。どちらに転んでも、ずっとストレスが続くことがないのです。
ところが私たち人間は、職場でハラスメントを受けても、相手が上司であったりすれば、その場で戦うわけにもいかず、また簡単に逃げ出すわけにもいきません。ほかの動物より発達した記憶力と想像力を備えた私たち人間は、ハラスメントをした相手の目の前から離れたとしても、そのときの様子を記憶の中で反すうしてしまいます。加害者と職場で顔を合わせる可能性がある限り、次の日もその次の日も、家に帰っても、休日遊びに行っても、当時のストレスを体感を伴って抱え続けてしまうのです。
当然、このような状態が長期に渡って続けば、精神を病むことになります。だから、自然界の摂理に従うのです。
「戦う」とは、訴えることです。本人に直接、訴えることができるならば、それもあり。そうもいかないならば、助けを求める。周囲の人、頼りになる上司、人事、外部の相談窓口などに、勇気を持って訴えるのです。
「逃げる」とは、その職場を離れることです。被害を訴えても、訴えてもらちが明かない場合、そんな職場は離れたほうがいい。組織の体質というのは、なかなか簡単に変わるものではありません。「なぜ私が離れなければならないのか」「悪いのは私じゃない、あの上司だ」。そう訴えても、状況が改善しない組織もあるのです。
戦ってダメなら「逃げる」。それでいいのです。
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