「忘年会に誘うだけでハラスメント?」と悩む上司が見落としている、飲みニケーションの本質:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/3 ページ)
「若い社員が忘年会に乗り気じゃない」「ハラスメントと言われるかも」など、飲み会問題に頭を悩ます管理職は少なくない。「飲みニケーション」は何のために生まれたのか、どうしたら若い世代と分かり合えるのか――そのヒントを、河合薫氏が解説する。
部下に与えられた「ノー」の選択肢
違いがあるとすれば、部下たちには「ノー」という言葉が用意されていたかどうか。「ノー」が許されなかったかつての部下たちは、上司に「行くぞ!」と誘われれば行くしかなかった。さっさと帰りたいと、ちょっとでも嫌な顔をしようものなら、「生意気な奴」と揶揄(やゆ)されるのがオチ。
仕事が第一で、いや、正確には「上司」が第一で、家で奥さんや子どもたちからチクチク言われようとも、「仕事だから」と言い訳する以外の選択肢が用意されていなかった。
ですから、「ノー」と言える時代になったのは、ある意味喜ばしいことではないでしょうか。
私は新卒時、CAという一般とはちょっとばかり違った職に就いていましたが、それでも断る術もないままに “上司”に飲み会に連れ回されることがありました。上司の自慢話やら人生訓みたいなものを散々聞かされ、「若い=よく食べる」という勝手な方程式のもと、半ば強制的に「若いんだから、食べなさいよ〜」と、残った食事を食べさせられました。
その度に、「拷問だ……」と思っていました。
私は「飲みに行く」ことは嫌いではありませんし、歓送迎会や祝賀会、忘年会なども「大人の付き合い」として参加します。若い人たちの中にも、「上司と飲みたい」人は少なくありませんし、「一献かたむけながら、自分の話も聞いてもらいたい」若者もいます。
それでもやはり、「飲み会=出て当たり前」という圧が、かなり息苦しいのです。
「飲みニケーション」の神髄は
そもそも「飲みニケーション」という言葉の真意は、職場では話せないような本音を、上司と部下という立場を超えて語り合える経験が、仕事のやりやすさにつながることにあります。
飲み会をやったからといって上司と部下の親睦が深まるわけじゃない。職場で互いを尊重した対話があって、初めて「仕事以外の話ができる場=飲み会」が心の距離感を縮めるのに役立ちます。
もちろんときには、飲み会がきっかけとなり、職場でも話がしやすくなったり、コミュニケーションがうまく取れるようになったりするかもしれません。
それでもやはり “上司部下のいい関係”は、上司が部下と1人の人間として、正面から向き合う意識なくして築けるものではありません。それは言い方を変えれば、部下と向き合う確固たる気持ちさえあれば、別に飲み会じゃなくてもいいのです。飲み会をやるにせよ、職場でやればいい。立場を超えたコミュニケーションの場として、仕事に対しても自分に対しても、正直に、周りの人たちを思いやりながら、心地よい空気を作ることの方が肝心だと思うのです。
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