熱狂のW杯 日本代表が敗れるも、ABEMAは「勝った」といえるワケ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)
W杯が盛り上がりを見せている。日本代表は“死の組”を乗り越えながらも、ベスト8とはならず無念の敗退となった。一方、“過去最大”とされる200億円規模の投資を行ったABEMAは「勝った」といえそうだ。
放送権料の高まりによって、無料で視聴することが難しいという見通しもあった今回のサッカーワールドカップ(W杯)。その危機を救ったのが広告・ゲーム大手のサイバーエージェントの運営する放送プラットフォーム「ABEMA」である。同社は推定300億円を超えるともいわれる放送権料のうち、200億円(推定)を拠出して、全64試合を無料で視聴できる環境を整備した。
日本は予選リーグでドイツやスペインといった格上がひしめく“死の組”Eグループに属することとなった。ここで日本が爪痕を残せなければ、残りの決勝トーナメントは日本と関係のない国の戦いだけで構成されることになるため、視聴が期待できなくなる。しかし、日本代表チームの奮闘によって予選の試合はいずれもドラマチックな展開を生み出すこととなり、視聴者の熱量増加を加速させていった。
日本は惜しくも決勝トーナメントでクロアチアに敗北。しかし、突破が難しいとされたグループを1位通過したことで、ABEMAの視聴数はうなぎ上りに増加している。ドイツ戦があった11月23日に開局以来初めて1日の視聴者数が1000万人を突破。その後、コスタリカ戦があった27日に1400万、決勝トーナメント進出を決めたスペイン戦の12月2日は1700万を突破するなど快進撃を見せた。
ちまたでは、「大きな賭け」と評価されたABEMAのW杯無料配信だが、この賭けは吉と出たのか、凶と出たのか。同社の業績からも確認していきたい。
ABEMAは赤字が続くも、全体業績は依然黒字見通し
推定200億円ともいわれる巨額の放送権料の支払いを行ったとみられるサイバーエージェント。今回のW杯投資は、「過去最大」とされる(関連記事)。同社のメディア事業であるABEMAは、2022年度(21年10月〜22年9月)の通期決算において前年比35.3%増となる1121億円の売り上げを計上し、営業損益は124億円の赤字となった。赤字幅は前年比で27億円拡大しているが、赤字の伸び幅よりも売上高の伸び幅の方が大きいことから健全な先行投資が進行しているといえるだろう。
そもそも、ABEMAは設立以降、近年は年間100億円程度の営業赤字を出している事業セグメントであった。そのように考えると、23年度の決算においては放送権料の支払いもあって200億〜300億円程度の赤字となるケースもあり得るだろう。これは同社にとってどのようなインパクトがあるのだろうか。
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