熱狂のW杯 日本代表が敗れるも、ABEMAは「勝った」といえるワケ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
W杯が盛り上がりを見せている。日本代表は“死の組”を乗り越えながらも、ベスト8とはならず無念の敗退となった。一方、“過去最大”とされる200億円規模の投資を行ったABEMAは「勝った」といえそうだ。
サイバーエージェントの業績を確認すると、ABEMAの「メディア事業」の他に、同社のルーツとなる「広告事業」と、『ウマ娘 プリティーダービー』や『グランブルーファンタジー』に代表されるCygamesの「ゲーム事業」が収益の柱となっている。
トップの売上高を誇っているのが広告事業で、その規模は22年度で売上高3768億円にものぼり、営業利益は244億円。ゲーム事業はウマ娘が21年度に流行した反動で減収減益となっているが、それでも2283億円の売上高と605億円の営業利益を生み出している。つまり、サイバーエージェントは広告とゲームという稼ぎ頭のビジネスで、既に849億円の営業利益を生み出しており、ABEMAの赤字を加味しても会社全体では691億円と大幅な黒字企業ということができるのだ。
そして、23年度は既に400億〜500億円のレンジで最終営業利益を想定している。これはW杯のコンテンツ投資とゲーム事業の収益不確実性を加味した結果であると考えられる。22年度比で最大4割ほど減益する見通しをW杯開催前に発表している時点で、同社はそもそも単年でW杯の放送権料を回収するほどの利益を出す、といった楽観ストーリーを描いているわけではないということができるだろう。
従って、注目が集まる「200億円投資」は日本の決勝進出によって「勝ち」だと見なされていた節があるが、今後発表される決算においてはそれによる減益が色濃く反映されることとなりそうだ。これにより、200億円の投資が「負け」だったという具合に見方が変わってくる可能性がある。しかし、筆者としては中長期的な視点で間違いなく今回の投資は「勝ち」であったと言いたい。
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