熱狂のW杯 日本代表が敗れるも、ABEMAは「勝った」といえるワケ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
W杯が盛り上がりを見せている。日本代表は“死の組”を乗り越えながらも、ベスト8とはならず無念の敗退となった。一方、“過去最大”とされる200億円規模の投資を行ったABEMAは「勝った」といえそうだ。
W杯投資がもたらす、さまざまな副次効果
ABEMAの配信ページではアクティブな視聴数を確認できる。W杯の枠では、アクティブな視聴数が試合当たり1500万〜2000万人も確認できた。これは単純に人口比で視聴率を考えたとき、15〜20%に近い数値となるだろう。
ABEMAでは、W杯の他にもお笑いコンビ・千鳥をメインに据えた『チャンスの時間』や、民放と連動した『しくじり先生』といったバラエティ枠をはじめとしてさまざまな番組をリリースしている。今回のW杯配信で獲得した新規のユーザーは、そのような他の配信コンテンツにも還流していくことが考えられる。全体的な番組の視聴数が底上げされ、民放などと比較したプラットフォームとしての影響度が一段と増してくることが考えられるだろう。そうなると、ABEMAの有料コンテンツの視聴増だけでなく広告を出稿する広告主の出稿金額も一段と増加していくはずだ。
そもそも、サイバーエージェントの今期における営業利益が、依然として400億〜500億円の黒字見通しであることを踏まえると、少なくとも今回の200億円ともいわれる投資を行っても赤字にすらならない。通常、数百億円規模の新規投資を行う企業は、単年で赤字に陥ってもおかしくない。サイバーエージェントの藤田社長が今回の放映の投資を決断した背景には、同社の盤石な事業基盤が大きな要因であったと考えられる。
今回のW杯では、ABEMAが2000万人が同じ時間帯に視聴してもサービスが継続できるだけのスケーラビリティがあることも判明した。今後は投資の軸をシステム面からコンテンツ面にシフトしていく姿勢も、今回のW杯無料配信からうかがえる。23年3月には野球の世界一を決定するワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催される。WBCも視聴者が無料で視聴できるようになるのだろうか、これからのABEMAの動向に注目だ。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCFO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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