宮城県民のソウルフード「パパ好み」 ファンを惹きつけ続けるための工夫とは?:地域経済の底力(1/3 ページ)
宮城県大崎市で事業を営む、創業71年の松倉。従業員わずか10人程度の小さな会社だが、同社の看板商品である「パパ好み」は、宮城県民はもとより、全国に数多くのファンを抱える。一見すると変哲のないおつまみ菓子なのだが、人々を飽きさせないための工夫があった。同社の松倉善輝社長に話を聞いた。
東北新幹線で仙台の1駅隣にあるJR古川駅。そこから歩くこと約20分。幹線道路沿いに建つのが松倉のオフィス兼店舗である。
松倉は、米菓や豆菓子などを製造、販売する創業71年の老舗企業。宮城県外の人にとってはあまりなじみのない菓子メーカーかもしれないが、地元では絶大な人気を誇る商品を作っている会社なのだ。
その商品とは「パパ好み」である。宮城県を中心に販売。2022年から仙台駅・新幹線改札内のキオスクでも取り扱いを始めた。パッケージ、中身ともに素朴なおつまみ菓子ながら、飽きのこない味わいなどが数多くのリピーターを生んでいる。同社の収益は非公開だが、売上高全体の8割近くをパパ好みが占めるほか、最大で1日に1万個を製造することもある、押しも押されもせぬ看板商品である。
パパ好みがここまで支持される理由とは何か。3代目社長として6月に就任した松倉善輝社長に話を聞いた。
売れ筋商品をミックスして誕生した「パパ好み」
松倉は1951年、ここ大崎市古川の地で、善輝社長の祖父である松倉昭氏が創業した。
「もともとは農家で、野菜などを売ったお金で、海の方まで行って浜の食材を仕入れて、それをまた販売してという、商店みたいなことをやっていました。戦後間もない当時、地元の人々は甘いものに飢えていたこともあって、ある時から砂糖とピーナッツを仕入れて、それを混ぜて売るようになりました」
その商品が人気を呼び、松倉は豆菓子をはじめとする菓子類の販売がメインになった。その後、商品ラインアップが増えていくと、次第に売れ筋が決まってきたため、それらをミックスして1つのパッケージにした。これが60年に発売した「パパ好み」である。
客に人気の菓子を一緒に詰め合わせたことで生まれたパパ好みは、60年以上経った今も、基本的なコンセプトは変わっていない。現在は8種類のあられと、アジ、ピーナッツがミックスされているが、「胡麻(ごま)のついたものや、桜の形のあられは当初から入っています」と善輝社長は話す。
一方で、常に変えていることもある。複数のあられを一緒に食べることでおいしさが増したり、食感をさらにより良くしたりするために、味の分析を綿密に行っているのだ。
「当然、菓子一つ一つの食感と風味にはこだわっていますが、それ以上に全体の調和を大切にしています。そのために塩分や辛味などのデータを取って、どの組み合わせでもおいしくなるようにと味のバランスを考えています」
なぜこういうことをしているのかといえば、地元客の中には、パパ好みの小袋の封を開けて、そのまま口に流し込んで食べる人も多いため、菓子それぞれの“個性”よりも、パパ好み全体の“チームワーク”が求められるからである。
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