相鉄・東急「新横浜線」開通で影響する16路線を読み解く:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/7 ページ)
2023年3月に開業予定の「新横浜線」は、過去最大といえるほど複雑な鉄道運行計画になっており、9社局16路線が関連する。本稿では、東急電鉄と相模鉄道の発表をもとに、各社の思惑などを考察しつつ、最後に2つの提案をしたい。
路線略図で運行パズルを解く
新横浜線に関連する路線の略図をつくってみた。四角囲みは駅名、駅間を結ぶ線に付けた英字は各社局が使用している路線記号、または駅ナンバリング記号。( )内は路線ごとに分類されていない区間について、便宜上筆者が付記した記号。複雑さに戸惑うばかりだ。この図では東武東上線と西武池袋線の池袋駅、西武池袋線と東京メトロ有楽町線方面、所沢駅と西武球場前駅のラインを省略した。
<凡例>SO(h):相鉄本線、SO(i):相鉄いずみ野線、SO(s):相鉄新横浜線、TY:東急東横線、MG:東急目黒線、SH:東急新横浜線、SI:西武池袋線、si:西武秩父線、SI(y):西武有楽町線(小手指〜西武秩父間は休日の「S-TRAIN」のみ)、TJ:東武東上線(直通運転は森林公園まで)、F:東京メトロ副都心線、N:東京メトロ南北線、SR:埼玉高速鉄道、I:都営三田線、JA:JR・相鉄直通線(記号は埼京線)、MM:横浜高速みなとみらい21線
趣味で運行系統やダイヤを予想して楽しむにしても、ほかにラクな路線がありそうな気がする。しかし各社の発表を見ると、この煩雑さを克服し、利用者にとって便利な鉄道でありたいという気持ちが見えてくる。相互直通運転にあたって各社の調整が必要だ。もちろん譲れるところ、譲れないところがある。
優先度の高い路線を探してみよう。この図では新規開通する羽沢横浜国大〜日吉間に関連する路線を太くしているけれども、鍵を握る路線は細い線のほうだ。記号JA、JR東日本の「JR・相鉄直通線(相鉄・JR直通線)」だ。事実上、埼京線を大崎から延伸したような運行形態である。ならば埼京線でいいと思うけれど、その理由は後ほど考察する。
埼京線は武蔵小杉〜西大井間で横須賀線、山手線に並行する区間で湘南新宿ラインと線路を共用している。横須賀線は総武快速線、湘南新宿ラインは東海道線、高崎線、宇都宮線と線路を共用している。JR東日本がどの路線を優先してダイヤを決めているか。それぞれの路線にラッシュアワーがあり、在来線特急が走る。JR・相鉄直通線の優先度は高くなさそうである。つまり、他の路線の都合に合わせる必要がある。
そんなJR・相鉄直通線と直通する相模鉄道は、やっぱり相手に合わせる必要がある。相模鉄道だって事情はある。しかし列車の運行計画は中央から外側に向かって決まっていくものだ。運行本数が少ないほど融通が利くからだ。
幸いにも、JR・相鉄直通線は新横浜駅より相模鉄道寄りの羽沢横浜国大駅で相互直通している。だから相模鉄道側が調整すれば良い話で、東急線系統の影響は少ない。新横浜駅は島式プラットホームが2面、線路は3本あり、中央の線路を使って双方に折り返し運転ができる。東急側、相鉄側で直通列車の折り合いがつかなければ、新横浜で折り返せばいい。
次の優先事項は西武鉄道の特急列車だ。西武池袋発の特急列車「ちちぶ号」は毎時30分発、夕刻から毎時00分の「むさし」が加わる。この時刻を崩さないとなれば、副都心線方面直通列車の時刻も動かしにくい。
相互直通運転において、折り返し設備のある駅は多いほうがいい。列車の遅延、故障、事故などでダイヤが乱れたときに、直通運転を中止して自社線内の運行本数を維持したり、ダイヤを立て直したりできるからだ。新横浜駅のほか、相鉄線では羽沢横浜国大駅、西谷駅に折り返し可能な設備がある。東急線は日吉駅と武蔵小杉駅が折り返し可能だ。
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