レジ袋有料化の“二の舞”か プラ削減のために導入した「紙ストロー」が別の環境問題を引き起こすジレンマ:日本企業の危うい視点(2/2 ページ)
2022年は「プラスチック削減元年」と言っても過言ではないほどに紙ストローが普及した。環境に配慮した取り組みのようだが、レジ袋有料化同様に紙のほうが本当に環境負荷が小さいのか? という疑問が消費者の中で渦巻いているように感じる。紙ストロー移行は本当に意味があるのかというと……
日本企業の危うい視点
紙、プラスチックそれぞれにメリット・デメリットが存在し、トレードオフの関係にある。企業は紙移行を推進することで環境対策をアピールしているが、本当にそれは正しい決断なのか? 業界や企業によってはプラスチックを利用したほうが、最終的な環境負荷を小さくできる可能性もあるのではないだろうか?――中谷准教授はテトラパックのレポートを踏まえて、日本企業の環境対策に警鐘を鳴らしている。
欧州では、環境に対する影響レポートを作成する際に、欧州委員会が設定した「気候変動」「非再生可能資源」「水不足」などLCAにおける16〜17の影響領域に準じた環境負荷を算出・評価するのが一般的だという。
しかし、日本企業がLCAを語る際には「CO2排出量」に絞って議論される傾向にあると中谷准教授は指摘する。「CO2排出量の算出・評価はデータが集めやすいため数値としての確実性が高いです。一方、データ収集が困難で数値の不確実性も高い影響領域については算出・評価を控える傾向にあります。不確実性があってもまずは数値を出すという欧州のLCAとは志向の違いも関係するかと思います」(中谷准教授)
また、CO2排出量という狭い話の中でさらに企業の視野が狭くなっている点も指摘する。
「総体としての環境負荷を減らしたいはずなのに、いつの間にかCO2に閉じた話になっています。そこからなぜか、CO2がダメだ=プラスチックがダメだという問題に置き換わっています。最終的に、プラスチックの中でもコンビニ袋やストローがダメだという議論になり、紙に移行するという企業の動きが活発になっています」(中谷准教授)
「紙の製造工程でかかる環境負荷」という視点が欠けてしまっている。その結果、プラスチックの総量は減少したかもしれないが、環境負荷の総量は減らない、むしろ増えている可能性も考えられるという。
そうは言いつつ、企業側の視点に立って考えると、「他社が脱プラスチックをしているので、うちもやらないと」と不安を感じるのも理解できる。中谷准教授は自社のスタンスを明確にすることが重要だと話す。
「企業は『他社がプラスチック削減の成果をアピールしているからうちでもやろう』というスタンスではなく、どの環境問題への対策を講じていくのかを明確に示すべきです。『この領域の環境負荷が大きく、削減するべきと考えるからこの対策を優先する』など、目的と方法の関係性を消費者に示すことで得られる理解があると思います」(中谷准教授)
紙ストローに対する消費者の反応を見ていると、環境対策と経済活動はトレードオフの関係にあるように思えてしまう。向き合うべき環境問題を定義し、消費者の意見を組み込んで軌道修正しながら環境対策に取り組む企業が増えることで、環境対策と経済活動が両立し、健全な社会につながっていくと期待したい。
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