「iPhone 14が売れていない」とささやかれる本当の理由:本田雅一の時事想々(3/4 ページ)
先日アップルのティム・クックCEOが来日し、日本との結びつきをアピールした。その背後で「iPhone 14が売れていない」というアンケート結果などが話題になっている。こうした話題を正しく読み解くには、アップルを取り巻く市場の変化を知る必要がある。どういうことかというと……。
成熟したライフスタイルに密着した市場の特徴
と、ここでスマホとは一見関係なさそうな、大昔のテレビ市場の話をしたい。
現在は少しだけ数字が変化しているが、日本のテレビ視聴世帯は5000万程度で推移していた。これに対して年間に売れるテレビの数は800万台程度。実際にはよく売れる年には1000万台ぐらい。これがテレビメーカーが話していた、国内テレビ市場の数字だった。
その市場を振り返るわけではないが、当時、新型のテレビや新しいディスプレイ技術の導入とともに「今度の製品はこんなところがいいよ」と記事を書くと、必ずあったのが「もう十分。新しいテレビをそんなにしょっちゅう欲しいとは思わない」という意見だった。個人の消費者だけではなく、業界全体を見ているはずの新聞記者なども同様の論調でテレビ市場の先行きが急変するような書き方をしているのも見かけた。
しかしよく考えてみてほしい。
テレビ視聴世帯数は、ほぼ日本の世帯数とイコール。つまり普及率は100%に近く、製品の寿命も長ければ10年以上、比較的よく買い替える人でも5年程度と長寿命の製品で、もはやライフスタイルを彩るインフラのひとつと言っても過言ではなかった(現在は状況が変化しているが)。
テレビは毎年、新しい機能などで訴求して売る商品ではなく、消費者それぞれが買い替えるべきタイミングにおいて、他社よりもより良い製品として訴求することで売り逃さないことが肝要だった。
と、この状況は現在のスマートフォンも同じだ。
ラインアップに普及型製品と呼べるようなモデルがなく、比較的古い世代の製品でも基本ソフトのアップデートが継続して提供されてきたiPhoneならなおさら。買い替えを促進するどころか、古い機種へのケアが厚い。
早期に陳腐化させ、買い替えを促すビジネスモデルではなく、長く使ってもらうことでブランドへの信頼感を高め、いずれ訪れる買い替えるべきタイミングで再びiPhoneを選んでもらう。そのために、魅力的なiPhoneが用意されていることが重要なのだ。
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