JR東日本がこのタイミングで「銀行業」に参入した理由:意外となかった(1/3 ページ)
JR東日本が、銀行業への参入を発表した。鉄道会社が銀行ビジネスを手掛けることは意外ではないが、なぜ今まで実現してこなかったのか。その背景には、日本の経済界そのものの構造が関係しており……。
12月13日、JR東日本は銀行業への参入を発表した。正確には、新しいデジタル金融サービス「JRE BANK」を2024年春に開始する。JR東日本グループの銀行口座を利用者に提供するという。
発表によると、JR東日本グループブランドの銀行口座の提供は、ネット銀行口座数第1位の楽天銀行が保有するインフラを活用し、ビューカードが同行を所属銀行とする銀行代理業によって実現する。
楽天銀行の仕組みを使い、JR東日本ブランドの銀行をビューカードが実務を担うことで提供する形となる。
どんな銀行になるのか?
ポイントとATMに優位
JR東日本は、ポイントサービス「JRE POINT」を軸に、鉄道や各種サービスの利用者を囲い込もうとしている。JRE BANKでもまた、預金や住宅ローンなどのサービス利用状況に応じたJRE POINTの付与や新幹線、列車優待などの特典を用意している。
JR東日本ならではの強みは、多くの駅に設置しているATM「VIEW ALTTE」である。もともとはビューカードのオートチャージやチャージ金額の設定、ビューカードを利用したSuicaへのチャージ、あるいはショッピング枠の回復ためビューカードの引き落とし日より前の返済などでの利用を想定して駅構内に設置しているものだ。提携する金融機関によっては、手数料無料で引き落としも可能になっている。
最近は「モバイルSuica」に対応したスマートフォンも増え、駅のATMの利用頻度が減っている。しかし、ビューカードや提携銀行に関連したサービスはいまだに人々の役に立つものになっている。
JRE BANKでは、口座残高の現金引き出しは、駅のATM「VIEW ALTTE」で無制限で手数料無料にする予定だという。日々利用する駅で、必要なときに必要なだけ預金を引き出すことが可能だ。一般の銀行ATMでは、時間帯によっては手数料を必要とするところもある。
クレジットカードの国際ブランドと提携し、JRE BANK専用のデビットカード付きキャッシュカードを発行する計画もある。JR東日本がこれまで発行していたSuicaやビューカードに加え、新たな決済方法を提供することになる。
鉄道会社は、鉄道だけではなく多角化経営をすることが、現代ではあたり前になっている。しかし、銀行ビジネスを手掛ける鉄道会社というのは、意外なことにない。
その背景には、鉄道会社の事業構造だけではなく、日本の経済界そのものの構造がある。
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