LCCはコロナ前より成長しているのに、なぜANAはまだ回復途上なのか?:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(1/5 ページ)
コロナ禍で一時新卒採用を中止するなど、苦しいイメージの航空業界。苦境の底は脱した感がありますが、とはいえ今もANAは回復途上の状況です。コロナ前より成長しているLCCと、なぜ差がついたのでしょうか。
決算書といえば投資やビジネス視点で見るイメージがあると思いますが、より一次情報に近い経済ニュースでもあります。
「決算書で分かる日本経済」ということで、12月は全国旅行支援を含め変化の大きい移動・交通・レジャー関連の業界について4回にわたって取り上げています。
12月の掲載記事
今回取り上げるのはANAホールディングスです。これまでは2回に渡りJR東日本・JR東海と鉄道業界の2社を取り上げましたが、今回は航空業界がどのような状況になっているのか見ていきましょう。
ちなみにANAは航空による運輸事業の他にも、「空関連事業」として機内食や国際貨物の輸送、「旅行事業」として旅行サービスの提供、「商社事業」として航空での物販などさまざまな事業を行っています。
基本的にはどの事業も飛行機での移動が回復すれば業績も伸びるため、今回は運輸事業だけに注目します。まずはここ数年の業績の推移から見ていきましょう。
黒字に戻ってはいるものの、コロナ禍前の水準は程遠い
売上高の推移を見ていくと、コロナ禍前の2019年3月期(2兆583億円)までは右肩上がりで成長が続いていましたが、21年3月期には7286億円になりました。22年3月期においても、多少の回復は見せつつも1兆203億円と、コロナ禍前の半分以下の状況が続いています。
売り上げは微減だった20年3月期ですが、利益面は大きく悪化し、純利益は276億円に。19年3月期の1107億円と比べると、大きなダメージがうかがえます。21年3月期には4046億円の大きな赤字へ転落、そして2022年3月期も1436億円の赤字と苦しい状況が続いています。
コロナの影響を非常に強く受けたことが分かります。以前取り上げたJR各社と比べても業績の悪化幅は大きいです。
21年3月期がコロナ禍前の19年3月期の純利益に対して何年分の赤字になってしまったのかを計算してみると
- ANA:3.65年
- JR東日本:1.96年
- JR東海:0.46年
となります。差の大きさが分かりますね。
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