51歳の苦悩──ずるずると会社に残る私は、ダメな人間なのでしょうか?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
今の会社でのキャリアに不安を抱えながらも、転職する勇気も出ない。ずるずると会社に残る自分は、ダメな人間なのか?──そんな悩みを抱える40〜50代のビジネスパーソンは少なくない。こうした悩みや不安とどのように向き合うべきなのか。
ライフステージによって「仕事」の解釈を変えることもできます。
例えば、リタイアの迫った人が、それまでは境界内にあった“有給の仕事”を外に排除し、代わって“無給の仕事(ボランティアなど)”を入れることで、「リタイアしたらどうしよう」というストレスの雨を回避し、「これからボランティア活動に最善を尽くそう」と生きるエネルギーを取り戻せるようになります。
ボランティアに精を出すことで、幸福感を持続させるのです。
件の調査の、ボランティア活動や保育・介護、町内活動などの、無償労働、社会活動、地域交流に参加する 「ヘルプ型」 の人ほど昇進意欲も高いという結果は、 まさに彼らが 「仕事」の解釈を変えたことを意味しています。それまでの「仕事=有給の仕事」を、 「仕事=有給・無給の仕事」に変えた。 「会社だけが人生じゃない」と思考を変えたことを示唆する結果です。
会社=COMPANY(カンパニー)とは、 「ともに(COM)パン(PAINS)を食べる仲間(Y)」です。 「個」ではなく「チーム」です。 「お互いさま意識=ヘルプ型」のある人は、会社というコミュニティの一員であり続けようとした人たちです。
そこに「会社だけが人生じゃない」という思考が掛け合わされたことで、昇進意欲=能力発揮の機会を手放さずにすんだ。一見矛盾しているように見えるかもしれませんが、キャリアが広がったのです。
彼らは決して「会社員」をあきらめてはいません。
年齢を重ねて50歳にもなり、役職が高くなると、「人に頼るなんて弱い奴がやることだ」などと思いがちです。しかし、傘を借りる勇気があれば、世界が変わります。それまで「時間がない」 「忙しい」 を言い訳にしてきた、 会社の外の社会活動に具体的にかかわると、「私」が変わります。
「ずるずる会社に残る自分」を卑下せず、会社員をあきらめなければいいのです。
一つだけ条件があるとすれば、四番バッターを目指すのをやめて、守備に回ること。打球がどんな方向に飛ぼうとも、確実にキャッチする技を磨いてください。
「しがみついてる」 と思っていると、 本当にダメになる。 会社員をあきらめない!
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)がある。
関連記事
- 「課長まで」で終わる人と、出世する人の決定的な差
「『課長まで』で終わる人と、出世する人の決定的な差」とは何か? がむしゃらに働いても、出世できる人とそうでない人がいる。その明暗を分けるたった1つのポイントを、解説する。 - “スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。 - 「新人が育ってくれない」と悩む上司が知らない、Z世代の特徴とは
新しい価値観を持つ「Z世代」が新入社員として働き始めている。仕事への向き合い方をめぐって摩擦が起きる現場も少なくない。Z世代は何を考えているのか、それに対し、上司などの旧世代の社員はどのように対応すべきなのか。 - 「仕事ができない人」に特有の、3つの思い込み
仕事ができる人とできない人の違いは何か。ちょっとした習慣や物事の捉え方のコツをつかめば、できない人を脱却できるかもしれない。「できない人の思い込み」を基に、そのヒントを解説する。 - 月給35万円のはずが、17万円に……!? 繰り返される「求人詐欺」の真相
求人票に記された情報と職場実態が大きく異なる、「求人詐欺」が後を絶たない。洋菓子店マダムシンコの運営会社の元従業員は「月給35万円との約束で入社したが、実際は月給17万円だった」として労働審判の申し立てをしている。求職者を守る法律や求人メディアの掲載基準もあるにもかかわらず、なぜ求人詐欺はなくならないのか? ブラック企業アナリストの新田龍氏が実態に迫る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.