電気代上昇のカラクリ
国内電気料金は、福島原発事故以降、大幅な上昇が続いている。電気料金の国際比較では、家庭用が米国の2.0倍、フランスの1.3倍、産業用が米国の2.4倍、フランスの1.4倍で、海外との産業競争力の観点からも大きなマイナスとなっている。
上昇の要因としては燃料費の高騰だけでなく、「再エネ賦課金導入」と「原子力発電所の停止」が挙げられる。再エネ賦課金に関しては、再エネの固定価格買取制度(FIT、Feed-in Tariff)により、21年度の買取費用総額は3.8兆円に上り、国民負担となる再エネ賦課金2.7兆円が電気料金に3.36円/kWh加算されている。
買取費用総額の内訳は、住宅用太陽光0.8兆円、事業用太陽光2.7兆円、風力発電0.2兆円等となっており、12〜14年度に認定された事業用太陽光が全体の60%(2.3兆円)を占める。これらの期間における認定調達価格と産業用電気料金平均単価を比較すると、2012年度が40円対15.7円、2013年度が36円対17.5円、2014年度が32円対18.9円(いずれも1kWhあたり)で、当時の電気料金に比べてかなり高額の買取となっている。
しかも固定価格での買取保証期間が産業用の場合20年と長く、外資系企業でも確実にもうかる仕組みのため、外国資本によるメガソーラー買収が全体の約3割を占める状況となっている。
福島原発事故以降、原子力の長期停止により、火力発電が大幅に増加し、2011年度からの6年間で約15.5兆円の追加燃料費が発生したことも電気代上昇の要因となっている。2016年度の約1.3兆円の追加燃料費は、4人家族では約4万円/年を追加的に資源国へ支払っていることになる。
一方、変動再エネの導入拡大により、電力各社は稼働率が低下し採算性が悪化した火力発電所の休廃止を加速しており、予備率減少で電力の需給逼迫の懸念が顕在化してきた。2012年導入以来初となる「電力逼迫警報」が、2022年3月21日東京電力管内に発令され、節電と揚水発電フル稼働で停電を回避できた。
同年6月末の猛暑で経済産業省が26日に初めて「需給逼迫注意報」を東京電力管内に発令し、節電を呼び掛ける事態となった。さらに23年1月、2月には東京電力管内の予備率は5月時点で▲0.6%、▲0.5%と見込まれていたが、火力発電所の復旧見通しなどがついたため、安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる見通しとなった。ただし、依然として厳しい状況にあり、節電などの応急処置だけではなく抜本的な電力供給拡大対策を早急に実施する必要がある。
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