原子力の再稼働による長期安定電源化
福島原発事故で国内全ての原子力発電所54基(BWR30基、PWR24基)が運転停止した。年間総発電電力量の29.3%に相当する。準国産エネルギーとして安定供給に寄与してきた原子力は、その後、大幅に稼働制限され、“世界一厳しい”とされる新規制基準が策定されて10年以上が経過した現在でもなお、再稼働を果たした原子力発電所はPWRの10基に過ぎない。
原子炉設置変更許可済が7基(713万kW)、審査中が10基(1053万kW)あり、合計17基が再稼働すれば1766万kWの電力が追加でき、日本のエネルギー危機を大きく改善することになる。
原子力は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きい。出力100万kW発電所の1年間の発電量に必要な燃料は、原子力(濃縮ウラン)が21トンに対して、天然ガス、石油、石炭はそれぞれ95万トン、155万トン、235万トンと膨大な量になる。
原子力は2年11ヵ月間、国内保有燃料だけで発電を維持できるが、天然ガス、石油、石炭はそれぞれ20日間、200日間、29日間しか維持できず、海外の燃料価格変動が直ちに電気料金に影響する。さらに産業の観点からは、原子力は国産化率90%を超え、国内企業に技術が集積し、部品点数約1000万点のサプライチェーンを国内に持ち、国際的に強い競争力を維持している。
福島原発事故を契機に、日本をはじめ世界各国では、現行の原子力発電所に対してより一層の信頼性・安全性の向上を図る施策が実施されている。特に、原子炉内で冷却機能が喪失した場合でも長時間持ちこたえ、発電所の安全裕度を拡大し得る高性能の燃料の開発が世界で推進されている。
米国ではエネルギー省(DOE)の支援で、事故耐性燃料ATF(Accident Tolerant Fuel)の開発がGNF(GEと日立の合弁企業)、ウエスチングハウス(WH)、仏フラマトムの3グループの参画で進められている。22年までに先行燃料集合体を商業炉に試用装荷し、25年までに市場に供給する計画だ。
GNFでは、現行のジルカロイよりも高温時強度に優れ、核分裂生成ガスの閉じ込め性が良く、事故時に水と反応して水素を生じないFeCrAl-ODS鋼(改良ステンレス鋼)の燃料被覆材「IronClad」の開発を進めている。18年3月に照射試験用燃料集合体をエドウィン・ハッチ原子力発電所1号機に装荷、20年1月に先行試験集合体(LTA)をクリントン原子力発電所に装荷し、性能評価を実施中である(原子力産業新聞20年1月16日)。
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