「箱根駅伝」唯一の協賛メーカー「ミズノ」が、なかなか“独走”できないワケ:箱根駅伝の裏側でメーカーの競争(前編)(3/3 ページ)
多くの視聴者を魅了する「箱根駅伝」唯一の協賛メーカーがミズノだ。「箱根駅伝」の名称を使ったPRが可能になるため、本来なら”最も稼げる”位置にいる企業となる。しかし、どうやらミズノは苦戦しているようだ。なぜかというと……
箱根ランナーの足元をめぐる戦いは超熾烈
ユニフォームのブランドはチームで決めるが、ランナーの最重要ギアであるシューズは個人で選ぶ。ナイキが17年夏に一般発売した厚底シューズを履いた選手たちが快走を連発したことで、シューズに熱視線が注がれるようになった。そして現在進行形で箱根駅伝ランナーの足元は“変化”している。
ナイキの厚底シューズ登場前の17年大会は出場210人中、アシックスが67人(31.9%)、ミズノが54人(25.7%)、アディダスが49人(23.3%)、ナイキが36人(17.1%)、ニューバランスが4人(1.9%)だった。そこからナイキが年々シェアを拡大していき、21年大会は出場210人中201人がナイキで出走。その着用率は95.7%に到達した。ナイキ以外のメーカーはわずか9人(アディダス4人、ミズノ3人、ニューバランス2人)。17年大会でナンバー1だったアシックスは箱根路から姿を消した。
しかし、各メーカーも厚底タイプの新モデルを続々と登場させていることもあり、前回の箱根駅伝ではナイキ154人(73.3%)、アディダス28人(13.3%)、アシックス24人(11.4%)、ミズノ2人(0.9%)、ニューバランス1人(0.4%)、プーマ1人(0.4%)だった。アディダスとアシックスがシェアを取り戻したことで、ナイキ一強がやや弱まったようだ。
大型スポーツ店のランニングシューズ売り場には、「ブルックス」「ホカオネオネ」「オン」「アンダーアーマー」「リーボック」「サッカニー」「スケチャーズ」「ヨネックス」などさまざまなメーカーのモデルが並んでいるが、箱根ランナーの人気は6ブランドに集中した。しかも、前回は上位3ブランドが98.0%ものシェアを占めていた。
では箱根ランナーたちはどのような基準でシューズを選んでいるのか。大半の選手が中学もしくは高校から本格的に競技を開始しているため、履き慣れたメーカーが存在する。大学でもそのまま継続して使用しているパターンが多い。
ただし、近年はシューズの性能が大幅にアップ。各社がハイスペックのモデルを登場させており、何を履くのか悩んでいる選手は少なくないようだ。
学生ランナーは基本、メーカーと金銭を伴うような契約はしていない。ただし、メーカーは有力選手に「試してみて、良かったらレースで着用してください」という感じで商品を提供している。選手側は自費で購入したシューズを含めて、最もフィットするブランドのシューズをレースで履くことになる。
またウエアサプライヤーを務めているメーカーは、該当チームにシューズも提供しているケースが多い。ナイキの厚底シューズが品薄で手に入らない状況だったときにも、ナイキと契約しているチームには人気モデルが提供されていた。一方で、他メーカーと契約しているチームは手に入らない。そのため、スポーツ専門ショップに大量発注していたチームもあったという。
いくら付き合いのあるメーカーといえども、選手たちのシューズ選びはかなりシビアだ。箱根駅伝に協賛するミズノは今回出場する5校にユニフォームを提供しているものの、同社のシューズを着用してレースに出場している選手はわずかしかいない。ただミズノも今後、新たな厚底モデルを発売する予定だという。そのシューズを履く選手が大活躍することで、再びシェアを取り戻す可能性は十分にある。
箱根駅伝のインパクトは中高生ランナーだけでなく、市民ランナーにも大きく影響する。「スポーツライフに関する調査」(笹川スポーツ財団)によると、20年の国内のランニング人口は過去最高の1055万人(推計)に上る。スポーツメーカーも“全力疾走”で正月決戦に向かっている。
関連記事
- レジ袋有料化の“二の舞”か プラ削減のために導入した「紙ストロー」が別の環境問題を引き起こすジレンマ
2022年は「プラスチック削減元年」と言っても過言ではないほどに紙ストローが普及した。環境に配慮した取り組みのようだが、レジ袋有料化同様に紙のほうが本当に環境負荷が小さいのか? という疑問が消費者の中で渦巻いているように感じる。紙ストロー移行は本当に意味があるのかというと…… - 北海道の“保育園”に首都圏から家族連れが殺到 人口3500人の過疎町に何が?
北海道厚沢部町という人口たった3500人の過疎町に首都圏から訪れる子連れ家族が後を絶たない。新千歳空港から車で3時間と決して利便性が高い町とは言えないにもかかわらず、なぜこんなに人が集まるのか? - 最も好きなカフェ 「コメダ珈琲店」「マクドナルド」を抑えて1位になったのは?
カフェチェーンブランド調査が行われた。最も好きなカフェは3位は「コメダ珈琲店」、2位は「マクドナルド」だった。知名度も店舗数も多い両店を抑えて1位になったのは? - レトルト食品界の王様「ボンカレー」 技術革新を重ねても唯一、”変えなかったこと”は?
われわれの生活に欠かせない「レトルト食品」。1968年、大塚食品が世界で初めて市販用レトルト食品「ボンカレー」を開発したことからその歴史は始まった。レトルト食品が”当たり前”になるまで、どのような技術革新があったのか? また、数多のアップデートを重ねても唯一、変わらなかったこととは? - TSUTAYAやAmazonで買えば? 「有隣堂」のYouTubeが、多くの人を”沼らせる”ワケ
創業100年の老舗書店「有隣堂」のYouTubeが話題だ。MCのミミズクが有隣堂社員と繰り広げる本音トークに中毒者が続出。実際、10カ月で登録者数が36倍になる躍進ぶりだ。視聴者を沼らせるYouTube「有隣堂しか知らない世界」に迫ってみた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.