「シン・鉄道」のカギを握る会社はどこか 技術がどんどん“加速”する:杉山淳一の週刊鉄道経済(6/6 ページ)
2023年も鉄道を巡って、さまざまなニュースが話題になりそうだ。いろいろな話がある中で、鉄道ライターの杉山淳一氏はどこに注目しているのだろうか。
技術革新でビジネスチャンス「シン・鉄道」時代へ
近鉄は可動式第三軌条用集電装置のほかに、フリーゲージトレインの独自開発にも名乗りを上げた。西九州新幹線や北陸新幹線では採用されなかったけれども、それは新幹線のような高速車両に適さなかっただけで、一般的な鉄道路線では使えるかもしれない。
近鉄は大阪線系統と南大阪線系統で軌間が異なるので、フリーゲージトレインを自社開発すれば、奈良や京都から吉野へ直行する列車を運行できる。蒲田と京急蒲田を結ぶ「新空港線」も、構想どおり東急の電車を京急線内に直通できるかもしれない。
本稿執筆時点の12月27日、阪急阪神ホールディングスがなにわ筋連絡線を31年に開業させる方針と産経新聞がスクープした。阪急十三駅とJR大阪地下駅を結ぶ構想だけれども、フリーゲージトレインがあれば、阪急沿線から関西国際空港へ直通できる。近鉄の関連会社、近畿車輛に大きなビジネスチャンスだ。
JR東日本は前出の新技術のほとんどに関わっている。リニアのJR東海と並び、日本の鉄道技術をリードする会社の一つだ。首都圏の大手私鉄との連携も活発だ。10月には西武鉄道とも協力関係を強化すると発表している。東急とは伊豆急を通じて伊豆方面の観光で協力関係にあり、17年にはJR東日本、東急、仙台空港の3社で訪日外国人誘客の連携を始めた。22年は鉄道開業150年、東急グループ創立100年を記念してイベント、コラボグッズ販売で連携している。
JR東日本は12月13日、銀行代理サービスに参入すると発表した。金融子会社のビューカードが楽天銀行のインフラを使って預金やローンなどの金融サービスを提供する。
大手私鉄は伝統的に不動産業や流通業を組み合わせて相乗効果を発揮してきた。国鉄出身のJR東日本は、低価格で土地を仕入れる住宅開発には不利、ターミナルの流通業も大手私鉄関連デパートが出店済み。それに代わる成長戦略がSuicaから始まる電子マネービジネスで、ついに銀行まで手がける。
鉄道の技術も革新し、鉄道周辺のサービスも変わる。鉄道会社の新時代が来る。23年も「鉄道とお金」は大きなテーマになりそうだ。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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