石炭火力発電の“延命”で灯る赤信号 世界から取り残される日本の「脱炭素戦略」:COP27では「化石賞」(1/3 ページ)
2022年11月の「COP27」で日本は脱炭素に逆行する国として、「化石賞」を受賞してしまった。この不名誉を返上する機会は23年5月に訪れるというが、日本にはどのような振る舞いが求められるのかというと……
2022年11月、エジプトで開催された気候変動に関する国連会議「COP27」。会期序盤に、恒例となっているNGOからの「本日の化石賞(Fossil of the Day)」(最も気候変動対策に後ろ向きの態度を示した国への賞)を日本は受賞してしまった。
「G20諸国の中で化石燃料利用に対して最も公的支援を出しており、脱炭素化に逆行している」という理由で、とても不名誉なことだ。
NGO団体、Oil Change Internationalの報告書は日本が19〜22年の平均で、化石燃料に対して年間約106億ドル(1兆円以上)もの資金を拠出していると示している。これは中国を超えてG20諸国で最大だ。
こうした資金は、しばしば「途上国での電力を使えない人々のために」といったレトリックが使われる。しかし、日本のガス関連資金の最大の受入国であるモザンビーク向け資金の9割は採掘と輸出関連の施設に使われ、電気などを人々が利用できるようにするエネルギーアクセスの改善向けではない。そして、第2位の受入国はロシアである。
化石燃料に対する資金拠出している国のランキング(画像:Oil Change International「Japan’s Dirty Secret: World’s top fossil fuel financier is fueling climate chaos and undermining energy security」)
日本が化石賞を受賞した日は、COP27会期中に設定されたテーマで「ファイナンス・デー(資金の日)」であったが、流れるべき資金が誤った方向に流れていることが全世界に知れ渡ってしまった。
日本がせこせこと石炭火力発電の“延命”を図っているのは明らかだ。世界から「時代遅れ」と後ろ指をさされる国に成り下がる前に、化石賞受賞の汚名を返上すべきだ。そして、そのチャンスは23年5月にやってくる。
WWFジャパンの自然保護室長 山岸尚之が、世界の化石燃料削減の動向と5月のチャンスの場で日本に期待されていることを解説していく。
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