劇場内のスマホ操作を注意→「何が悪いのか分からない」 福岡・博多座が検証動画をつくった背景:鑑賞価値を守るため(2/3 ページ)
小さな光でも暗い客席ではとても気になります――。福岡市の劇場「博多座」が、暗い劇場内でスマートデバイスを操作した際に、どれだけ光が目立つのか検証する動画を作成し、話題を呼んでいる。コロナ禍を経て劇場への客足が徐々に戻りつつある中、観劇に快適な空間を作ることで、来場客の満足度を高めたいとの狙いがあるという。
前のめりはどれぐらい視界をふさぐ?
博多座では2022年4月にも「前のめりは後ろの席の視界をどれくらいふさぐ?」と題した検証シリーズ動画を作成している。
座席の背もたれに背中をつけていれば、後ろの席からも視界は良好だが、前のめりの状態で着席すると、後方席からは舞台上の出演者が頭に隠れて見えなくなる。
この動画には「前のめりでこれほど視界が遮られるとは初めて知った」「自覚なく前のめりになっているかもしれないので、気を付けたい」と、分かりやすい内容に共感する声が多数寄せられた。
担当者によると、当時、人気の公演舞台『千と千尋の神隠し』を控え、これまで劇場にあまり来たことがない人や、子どもたちも多く来場するため、観劇マナーを改めて周知しようと考えて作成したという。
動画では、背もたれに背中をつけての観劇を呼び掛け、最後には「『心の前のめり』は大歓迎。」と洒落を利かせたフレーズで締めくくっている。
「鑑賞価値」の向上を目指す映画・劇場
検証シリーズ動画はどの程度の時間をかけて作成しているのか。担当者によると、公演がない合間を見て、スタッフらがカメラを手にして30分ほど使って撮影し、3日ほどかけて編集しているという。
スタッフらが自ら撮影し、検証動画を作成する取り組みは、映画業界でも見られる。イオンシネマを運営するイオンエンターテイメントは22年9月に、暗い映画館内でスマートデバイスの光がもたらす影響を実証検証し、結果を写真とともにTwitterに投稿。大きな反響が集まったため、同社は鑑賞マナー動画も作成し、同年10月から映画本編前に上映する取り組みを始めた。
演劇や映画業界がこうした取り組みを進める背景には、劇場での「鑑賞価値」を最大化したいとの考えがある。
コロナ禍で営業を休止するなどし、演劇や映画館市場は大きな打撃を受けた。帝国データバンクの調査では、21年度の国内映画館市場(事業者売上高ベース)は2100億円となり、過去10年で最少だった20年度(1783億円)と比べると回復基調にあるが、コロナ前の19年度(3271億円)の6割ほどの水準にとどまっている。
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