テレビの市場規模、今後5年で3000億円縮小──野村総研の分析が示すメディア業界の未来(3/3 ページ)
野村総合研究所は、テレビの市場規模が今後5年で3000億円縮小するとした業界分析レポートを発表した。同社は2028年までに「メディアコンテンツビジネスの主戦場はテレビ放送から配信サービスに移る」と予測している。
「日本は有料コンテンツに抵抗感強い」
ただ、ユーザーの拡大と収益化は一筋縄ではいかないようだ。同社は要因の一つに、日本人特有の有料コンテンツへの抵抗感を挙げる。日米でネットフリックスのユーザーを比較した場合、米国の人口は日本の3倍ながら、ユーザー数は10倍以上に及ぶという。
これに対し、日本は「広告モデルで運営される地上波放送を通じ、無料でおもしろいものを当たり前に視聴できたため、コンテンツにお金を払う行為への抵抗が強い」と指摘。今後の成長のためには「配信と放送の別を問わず、国内の有料動画サービスの限界はおおむね500万ユーザーという壁がある。成長の踊り場がみえてきており、さらなる成長には新しい一手が必要になる」と企業側に奮起を促した。
民放各社などがコンテンツを制作するには当然ながら資金が必要だ。各社が収入源の1つとするネット広告についても「個人情報保護の観点から、ターゲティング広告を打つことが難しくなってきた」として、再考を求めている。
「反応(クリック)のみをもって広告効果とするようなターゲティング広告の意識は、広告主のブランドイメージを毀損(きそん)するリスクもあり、改められつつある。広告そのものを自社コンテンツとし、プロダクトやブランドに共感を得て、ファンを育成する接点とするという発想が広がっており、オウンドメディアやコミュニティ形成などの施策が注目されている。6兆円ものメディア・広告の市場を、印象の残らないバラマキ広告へ投じるのではなく、良質なコンテンツの制作費へと転換し、文化と生活の向上に資する産業へと成長させることが求められる」(同社)
こうしたことから同社は「通信と放送の融合の実態は、通信(配信)が放送を侵食することである」と結論付けた。
その他、同社は5Gから6Gへの通信技術の進化や、Web3の登場による“GAFA支配”からの脱却、量子コンピュータの可能性などについても分析している。各カテゴリーの詳細は公式Webサイトで公開中だ。
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