アマゾンvs.ウォルマート──小売り王者が次に狙う「巨大市場」とは?:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(3/4 ページ)
アマゾンやウォルマートが狙う、次なる「巨大市場」がヘルスケアビジネスだ。なぜ、リテール大手が医療ビジネスに参入するのか? その狙いと、アマゾン・ウォルマートのそれぞれの戦略とは──。
対抗するウォルマートは
この、アマゾンのOne Medical買収のように、大手小売業がプライマリーケア市場に参入する動きは、小売企業が既に持つ米国全土の顧客ネットワークや物流ネットワーク活用、データ活用が主な目的と考えられます。
また同時に、大手小売りが持つ店舗ネットワークに薬局機能だけではなく、簡単にケアを行える医療施設を備えることで、米国の医療制度を改革し、さらなるユーザーの獲得、ロイヤルティーの向上、客単価向上などを狙っていることが考えられます。
例えば、22年にウォルマートは利益の大きいフロリダ市場に、医師が常駐する「ウォルマート・ヘルス」センターを新たに数カ所開設しました。この施設では、プライマリーケアサービスのほか、緊急医療、歯科・眼科、行動医療サービスなど、さまざまなサービスを提供する予定ということです。
米メディアのInsider intelligenceの記事によると、ウォルマートでは、18年時点において、この「ウォルマート・ヘルス」を29年までに4000店舗に拡大する計画に経営幹部が署名したことが明らかにされており、プライマリーケア市場参入の動きは何年も前から進んでいたことが分かります。
ウォルマート・ヘルスのWebサイトによると、米国人の実に3人に1人が医療費を気にして病院に行くことをためらっています。すなわち、医療費を下げることができ、費用の透明性が高くなれば、今より多くの市場が手に入ると考えられます。
多くの米国人にとって生活の中心であり、全てが安く手に入るウォルマートでプライマリーケアや歯科、眼科などの身近な医療サービスが受けられるようになることは大きな意味を持つのではないでしょうか。余談ですが、米国の民間健康保険では、医療と歯科、眼科が別々になっていることが通常なのでウォルマート・ヘルスが提供するワンパッケージのプランは大変分かりやすくうつるのではないかと思います。
また、ウォルマート・ヘルスは21年に遠隔診療サービスを提供する会社であるMeMDを買収したと発表しました。
この買収は、ウォルマート・ヘルスが緊急医療、行動医療、プライマリーケアなどのバーチャルケアへのアクセスを全米に提供することで、対面式のウォルマート・ヘルスセンターを補完することが狙いだということです。
同社のヘルス&ウェルネス担当のエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントであるシェリル ペガス博士も「今日、人々は医療ケアへのオムニチャネル・アクセス(リアルとネットの隔てのない接続)を期待しており、ウォルマート・ヘルス社のケア戦略にテレヘルス(遠隔診療)を加えることで、対面およびデジタルによる幅広いケアを提供することができます」と述べています。
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