売れる商材はAIに聞け 大塚商会の独自システム、営業全体の受注率上回る活躍ぶり:提案件数は1年で3倍に(1/3 ページ)
大塚商会は2000年初頭に独自設計の「顧客管理&営業支援システム」の運用を開始し、データドリブンな営業スタイルを構築した。現在は、AIの提案が営業全体の受注率上回る活躍ぶりを発揮しているという。なぜそんな体制を確立できたのかというと……
システムの開発および保守、パソコンや複写機といった事務機器の販売などを幅広く手掛ける大塚商会。2000年初頭に独自設計の「顧客管理&営業支援システム」の運用を開始した同社は、以降の商談5000万件以上、売上明細12億件以上というビッグデータを解析して営業活動を効率化する取り組みを続けてきた。
大塚商会 上席執行役員 マーケティングオートメーションセンター長の地主隆宏氏は、「大塚商会では、AIやビッグデータという言葉が一般に浸透する前から商談内容などをデータ化し、蓄積してきた」と話す。
地主氏によれば、1980年代までの大塚商会はマンパワーに依存した体質で、売り上げは社員数の伸びに比例していたとのこと。しかし、マンパワーだけで全ての顧客のニーズに応えるのには限界がある。社員数を無限に増やすのは現実的ではないからだ。
そこで、生産性の向上と財務体質の強化を目的に導入を図ったのが、先述した顧客管理&営業支援システムによるデータドリブンな営業スタイルだった。生産性の向上により、同社のパートナー企業は22年時点で国内外に約2400社、取り扱う商材は500万点超、年間取引の顧客は約28万7000社に上る規模となった。約9000人のグループ社員の3割強が営業職だが、1000社を超える顧客を抱える営業担当者もいるという。
営業担当者は顧客管理&営業支援システムのスケジュール機能を利用して商談の予定などを管理しているが、多くの顧客を抱える営業担当者を裏で支えているのが、AIによる「商談の提案」機能だ。担当している商材の受注可能性が高い潜在顧客や、商材の販売後に再訪していない顧客などをAIが洗い出し、空き時間に新たな商談予定を追加するというものになる。
「単に訪問先の提案や再訪のリマインドだけではなく、どんな商材のニーズがあるか、なぜ提案するのかという分析、さらに売上額の予測などもAIが提示する」と地主氏は話す。
大塚商会のトータルソリューショングループ経営支援サービス兼AIビジネス推進プロジェクト執行役員(中小企業診断士)山口大樹氏は「営業担当者は『顧客にはこういうニーズがある、そこでこの商材を提案する、こう言われたらこう返す、こういう展開になったらこの商材を提案する』といった仮説を数パターン用意して商談に臨む。ベテランの営業担当者は経験で得た『勘』で仮説を立てるが、その勘がバイアスになり最適な仮説にならないリスクもある。しかし、そこにAIの客観的な分析が掛け合わされることでより精度の高い仮説が立てられるようになる」と、AIの導入に肯定的だ。
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