売れる商材はAIに聞け 大塚商会の独自システム、営業全体の受注率上回る活躍ぶり:提案件数は1年で3倍に(3/3 ページ)
大塚商会は2000年初頭に独自設計の「顧客管理&営業支援システム」の運用を開始し、データドリブンな営業スタイルを構築した。現在は、AIの提案が営業全体の受注率上回る活躍ぶりを発揮しているという。なぜそんな体制を確立できたのかというと……
またAIアシスタントの導入は、商談後の報告書作成にも有効だった。従来、報告書は営業先から戻った後、社内のパソコンで作成していた。しかしAIアシスタントが稼働してからは、帰社中の電車内など、商談直後の記憶が鮮明なうちにアプリ内のメモに商談内容を残す営業担当者が増え、より精度の高い報告書の作成、データの蓄積につながったのだ。
ちなみにAIアシスタントは音声入力にも対応しており、クルマで移動することの多い地方の営業担当者は運転中に音声で操作しているという。従来は移動にしか使えなかった時間に見積書を作成したり、商談メモを残したりできれば、その分だけ訪問できる顧客の数も増えるというわけだ。
地主氏によれば「AIアシスタントは、営業担当者の利用状況も学習しており、使い方に応じて反応も変わってくる」とのこと。「受注が成立したときに『おめでとう』と褒める機能も実装しているが、それを『うれしい』と思うかどうかは人それぞれ。『うるさい』と感じる人には表示されなくなる」(地主氏)
AIアシスタントの導入について、当初は営業担当者の一部から否定的な意見も出ていたそうだ。しかし、実績を積み上げることでその有効性が口コミで広がり、利用率も上がっていった。導入当初の19年と比較すると、20年時点でAIアシスタントの利用者は2.7倍に増えたという。利用者が増えるにつれてアプリへの要望も増えた。「四半期に1回は機能を追加・アップデートしているが、それ以外でも現場の声を拾って随時改善している」と地主氏は話す。
「目指しているのは、営業担当者の困り事を解決してくれる“ドラえもん”のような対話型のAI。まだまだ本当の意味での対話というには不十分だが、テクノロジーはどんどん進化しているので、その進化を追いかけながら便利な機能を実装していきたい」(地主氏)
21年には、大塚商会が独自に培ったAI解析のノウハウを提供するサービスも開始した。課題を持つ顧客から預かった各種データを大塚商会のAIが解析し、課題解決に役立てるというもので、営業以外のニーズにも対応しているという。生産性向上が喫緊の課題となる中小企業での活用が期待される。
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