今、自治体に「消防・防災DX」が強く求められている──そのワケは?(1/4 ページ)
これまでの政府による防災対策は、実際に起こった大災害後にバージョンアップを繰り返してきた。今求められている「防災4.0」はこれまでのそうした対策とは少し経路が異なるものだ。防災4.0とはどんなもので、なぜ必要なのか。
2016年6月、内閣府が組織した有識者による会議体「『防災4.0』未来構想プロジェクト」が気候変動によって激甚化する自然災害に立ち向かうための提言をまとめました。
そこでは、人口減少・超少子高齢社会、都市化・地方の過疎化、情報通信技術の発達などの社会環境変化を考えると、最大規模の災害が発生した際の「公助」には限界があり、「共助」「自助」を支援する環境整備が必要だと示されました。
すなわち、国や自治体だけでなく、地域と経済界、住民と企業といった多様な存在が、それぞれの立場から「自分ごと」として防災を捉え、情報を共有しながら、相互につながるネットワークを再構築する。そのことで、社会全体のレジリエンス(復元力)を高めようということです。
「防災4.0」時代に求められるもの
これまでの政府による防災対策は、実際に起こった大災害の経験を踏まえた対応の見直し、いわば後追いの対策によってバージョンアップを繰り返してきました。
1959年の伊勢湾台風を機に整備された災害対策基本法(防災1.0)、95年の阪神・淡路大震災による政府の危機管理体制や自主防災組織の見直し(防災2.0)、さらに2011年の東日本大震災では地震・津波・原子力事故といった複合災害への対応(防災3.0)がなされています。
防災4.0がこれらと大きく異なるのは、大災害への「備え」を重視したこと、その手段の1つとして「デジタルの活用」を打ち立てた点にあります。
前述の提言では、推進すべき取り組みの3本柱として、「住民・地域における備え」「企業における備え」「情報通信技術の活用」を挙げています。
このように、地方自治体の「消防・防災DX」について考える前提として、住民・企業の主体的な参加や連携による「共助・自助の強化」と、災害の規模や範囲がこれまで以上に大きく激しくなることを想定し、先端技術も駆使して先手を打つ「備えの姿勢」が重要な意味を持つことが分かります。
なお、地域の防災を担う消防行政の管理者は市町村長(自治体の長)であり、国(総務省消防庁)や都道府県の役割はその補完と位置付けられています。従って、消防・防災DXも自治体の長が主導する「自治体DX」の一環に位置付けて考える必要があります。
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