海外大手が資金力で競争 動画サービス戦国時代、日本発「U-NEXT」が戦える理由:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(1/5 ページ)
今回取り上げるのはUSEN−NEXT HOLDINGS。コンテンツが値上がりし、動画サービス各社が投資余力で戦う中、動画配信サービス「U-NEXT」はなぜ戦っていけるのでしょうか。
昨年末はワールドカップが盛り上がりを見せました。試合内容もさることながら、全試合無料生中継を実施したサイバーエージェントの「ABEMA」にも注目が集まりました。
地上波の放送局が高騰する放映権料を受けて購入が進まない中で、放映権を獲得し全試合無料中継を実現したものでした。放映権料を広告収入で回収しきれなくなったテレビと、ABEMAのユーザー増をねらい広告費代わりに放映権を購入できるサイバーエージェント。多くの人が、動画配信のビジネスモデルの変化を実感したことでしょう。
決算書から企業を読み解く本連載ですが、今回から4回にわたっては近年の変化が大きい動画配信やテレビ、放送業界について取り上げていきます。
今回取り上げるのはUSEN−NEXT HOLDINGS。店舗などに音楽配信を行っていたUSENと、動画配信を中心としたU-NEXTが経営統合してできた会社です。国内動画配信サービスであるU-NEXTがどのような状況にあるかを中心に見ていきます。
コンテンツが値上がりする中、動画サービス各社は投資余力で戦う
USEN−NEXT HOLDINGSは、動画配信や音楽配信の他にも、業務店向けにPOSレジや配膳ロボットなどの店舗をDXする製品や、電力やガスの小売り、通信事業、自動精算機の製造販売やホテルの受付システムなど、業務店向けに多くのサービスを提供している企業でもあります。
このように複数の事業を持つ企業ですが、中でも動画を中心としたコンテンツ配信サービスや店舗DXは今後の成長余地が大きいと判断しており、キャッシュカウ事業(競争が激しくない市場で高いシェアを獲得している事業)である音楽配信などの利益を、コンテンツ配信や店舗DXへ投資しています。
動画配信サービスでは、コンテンツ力が重要です。他の事業でしっかりキャッシュを稼げていて投資余力があるというのは強みです。
いくつかのテレビ局が放映権を購入しない中、ABEMAがW杯の放映権を獲得したことからも分かるように、動画配信サービスが増加する中で多くのコンテンツは値上がりが進んでいます。
こうした状況下でも、他の事業の利益を回せるというのは単一の事業を行っている企業に比べると強みになるというわけです。ただし、ネットフリックスなどのグローバル展開している企業は、マーケットが大きい分資金力もあるため、勝負は簡単ではありません。
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