海外大手が資金力で競争 動画サービス戦国時代、日本発「U-NEXT」が戦える理由:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(5/5 ページ)
今回取り上げるのはUSEN−NEXT HOLDINGS。コンテンツが値上がりし、動画サービス各社が投資余力で戦う中、動画配信サービス「U-NEXT」はなぜ戦っていけるのでしょうか。
月額2189円のU-NEXT 物価上昇に耐えられるか
それではコンテンツ配信事業について詳しく見ていきましょう。
課金ユーザーの推移を見ると右肩上がりでの成長が続いており、前期比で36万人、前四半期比で9万人増の283.7万人です。
さかのぼって20年4月の1度目の緊急事態宣言時には四半期で24万人以上が加入し、大きな伸びとなりました。それ以降も安定して四半期あたり10万人前後の成長が続いており、一過性の要因による成長ではないことが分かります。
料金プランは月額2189円と動画配信サービスの中では安いとは言い切れない値段設定ですが、直近の課金ユーザーに関しても物価高の影響なども考えられる中で成長の鈍化は見られていません。
そしてコンテンツ配信事業のARR(年間経常収益)は679億1000万円という規模まで成長しています。コロナ禍前の20年8月期の第1四半期で371億4000万円でしたから、ここ3年ほどで大きな伸びとなったことが分かります。
業績が伸びてた要因には、U-NEXTのコンテンツ力もあるでしょうが、市場自体が成長していることも大きな要因です。動画配信トップのネットフリックスでは地域によっては会員数の伸び悩みや減少が起き始めていますが、アジア太平洋地域ではグローバルでの成長を大きく上回る成長が続いています。
U-NEXTの課金ユーザー数に関してもネットフリックスのアジア太平洋地域の成長率には劣るものの、グローバルの成長率よりは高い成長率をみせています。世界的に見れば、日本含めアジア諸国の動画配信サービスの普及が遅かった分、まだまだ成長が続いている状況です。市場成長が期待できるというのは大きな強みです。
また、減益となった要因は為替の影響によりコンテンツ調達原価の上昇にあったと同社は説明しています。海外から買うコンテンツが多いため、為替が利益面に悪影響を与えます。最近は円安も一服し、23年1月現在はドル円は130円を割る水準まで落ち着いてきたため、今後はコンテンツ調達原価の減少による利益面の回復は期待できそうです。
コスト面ではコンテンツ調達費が増加する一方で、広告費を増やすことはしておらず若干ながら減少しています。ここ3年ほどの推移を見ても広告費は横ばい傾向です。それでも売り上げは増加しているたえ、売り上げに対する広告費率は減少し続けています。
コストを大きく増加させることなく堅調にユーザーを積み上げているため、利益率も上昇しています。営業利益率は20年8月期の1.6%から、直近の23年8月期の第1四半期では9.9%まで増加しました。
先述したように、東アジアでは動画配信サービスは成長が続ていますし、日本としても市場の成長が見込める一方でコストは増加しないと見られます。今後も売り上げ、利益面ともに成長が期待されます。
とはいえ、物価高騰などが進む状況下で、解約が増えていくことが考えられるため、会員数の推移には注目です。
まとめ
動画配信サービス「U-NEXT」は、コロナ禍で売り上げ・利益ともに大きな成長をしており好調です。
直近は円安の影響によるコンテンツ調達コストの増加で減益となりつつも、広告費を増やすことなく加入者数は堅調な成長を続けています。
為替も円高に振れていますし、東アジアの動画配信市場が大きな成長を続けていることを考えても今後は大きな業績改善が期待できると考えられます。
筆者プロフィール:妄想する決算
決算は現場にある1次情報とメディアで出てくる2次情報の中間1.5次情報です。周りと違った現場により近い情報が得られる経済ニュースでもあります。上場企業に詳しくなりながら、決算書も読めるようになっていく連載です。
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