CA週2勤務にパイロット1人制──「消える仕事・残る仕事」論争は、時代遅れと言えるワケ:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
2013年に「人間が行う仕事の約半分が機械に奪われる」と予測した論文が話題となりました。それから10年、世の中は大きく変化し「消える仕事・残る仕事」と区別の付けられない状況が訪れています。航空業界の働き方を例に、「機械に奪われる」ほど単純じゃない人の働き方の多様さについて考察します。
人間が行う仕事の約半分が機械に奪われる──。
こんな衝撃的な予測が話題になったのは、今から10年前。「The Future of Employment: How Susceptible are Jobs to Computerisation?」というタイトルの原著論文に書かれたこの内容は、世界中の人々を震撼させ、議論を呼びました。研究を行ったのは、英オックスフォード大学でAIなどの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士です。
論文の最大の“ウリ”は、702の職種全てについて、コンピュータに取って代わられる確率を子細に試算したこと。その結果、「米国において10〜20年内に労働人口の47%が機械に代替可能である」との見解に至ったのです。
消える確率が高いとされたのは、一般事務、銀行員、警備員、スーパー・コンビニ店員、タクシー運転手、ウエイトレスなど。一方、残る確率が高いのは、医師や看護師、介護士や裁判官、スポーツ選手や芸術家、学術研究者、教師などの創造性や臨機応変さが求められる職業です。
また、野村総合研究所がオズボーン准教授・フレイ博士との共同研究により、日本の労働人口における影響を試算した結果でも、「労働人口の約49%が就いている職業において、機械に代替可能」と米国と同様の傾向が認められています。
一方で、オズボーン准教授らの分析方法には批判も多く、独ZEW研究所のメラニー・アーンツ氏らは、「職業を構成するタスク(業務)単位でみた場合に大半のタスクが自動化される職業は9%程度にとどまる」と結論づけました。
10年後、社会はどう変わったか?
世界中が「消える仕事、残る仕事」に沸き立った“あの日”から10年が経ち、その間に「当時は予測してなかった環境変化」が起こりました。100年に一度のパンデミック(もはや懐かしい言い方です!)に世界中が震撼。新型コロナウイルスによる「人と会えない社会」の到来により、一気にデジタル化は拡大しました。
並行して、2015年に国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みも加速し、産業構造も大きく変わりました。
こういった環境の変化を鑑みると、私たちの仕事に影響を与える要素は確実に増え、複雑に絡み合い、当たり前が当たり前でなくなり、「消える」とも、「残る」とも簡単に分類できない時代になったといえます。
それは「新しい働き方」が生まれる兆しでもあります。その例の一つが、コロナ禍の影響をダイレクトに受けた航空業界の変化です。
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