CA週2勤務にパイロット1人制──「消える仕事・残る仕事」論争は、時代遅れと言えるワケ:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
2013年に「人間が行う仕事の約半分が機械に奪われる」と予測した論文が話題となりました。それから10年、世の中は大きく変化し「消える仕事・残る仕事」と区別の付けられない状況が訪れています。航空業界の働き方を例に、「機械に奪われる」ほど単純じゃない人の働き方の多様さについて考察します。
「持続可能な働き方」を考える
これまでも、CAが総合職にチャレンジできたり、地方に転勤して地域振興に関わったりと、さまざまな働き方を可能にしてきたANAですが、今回の取り組みはある意味、「持続可能性を追求した働き方」だと私は考えています。
SDGsの8番目の目標は「働き方」です。「働きがいも 経済成長も」というキャッチコピーが日本では使われていますが、「包摂的かつ持続可能な経済成長及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」というのが、正式な和訳です。
冒頭の「消える仕事」が話題になった頃、「客室乗務員はやがてAIに取って代わられて、必要なくなるのでは?」という人たちもいました。確かに、機内のお食事サービスなどは自動配膳やオールセルフサービスなども可能かもしれません。
しかし、客室乗務員の任務はサービスではありません。あくまでも「保安要員」です。サービスはAIに任せられるかもしれないが、「人の命」を守るのは「人」にしかできない仕事です。
そして、そこで求められるのが、「経験ある人材」です。どんなにエマージェンシー訓練を受けていようとも、どんな便利な機材が搭載されようとも、現場での経験が必要不可欠。現場で学び、現場で悩み、現場で熱くなる経験の積み重ねが、AIにはないとっさのひらめきを生みます。
つまり、「週2勤務制度」が導入されれば、ライフステージによって「働き方」を自分でコントールできる。「仕事」「家庭」「健康」という3つの幸せのボールを一つも落とすことなく、ジャグリングのように回し続けられる。それが「働きがいのある人間らしい雇用」であり、「経済成長・生産性の向上」にもつながるのです。
いわずもがな日本は「超高齢社会」です。人口構成が変わることは、社会のスタンダードも変える必要があるのに働き方は変わりませんでした。これまでの「24時間元気でバリバリの働き方」を終わりにし、「細く長く続けられる働き方」が当たり前になれば、経験を社会に生かせるし、やりがいを維持することも可能なのではないでしょうか。
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