人のいる全ての空間を「資産」に変える! リテール業界の飛躍を後押しするエッジAIとは:日本のリアル産業を救う“エッジAI最前線”(1/4 ページ)
リテール業界はエッジAIを使ったIoTによって飛躍的に進化できる──そう話すのは、AI開発スタートアップのIdein(イデイン、東京都千代田区)中村晃一CEO。数年前のAIブームは沈静化したように見えるが、ここにきて再び注目が集まっている。そのトリガーとなる技術が「エッジAI」である。
リテール業界はエッジAIを使ったIoTによって飛躍的に進化できる──そう話すのは、AI開発スタートアップのIdein(イデイン、東京都千代田区)の中村晃一CEO。
数年前のAIブームは沈静化したように見えるが、ここにきて再び注目が集まっている。なぜなら以前はさまざまなハードルがあってできなかったことが、技術の進歩で可能になったからだ。そのトリガーとなる技術が「エッジAI」である。
エッジAIとは、エッジデバイスでAI処理を行い、クラウドとの通信を極力減らす仕組みのこと。IdeinはエッジAIのプラットフォームを提供していて国内シェアはNo.1(※)。中村氏は「この技術で人の動きを解析することで、店舗や工場など人が介在する現場(空間)全てを資産に変えられる」と話す。一体どういうことなのか。そもそもなぜ、エッジAIによってIoTが進化できるのか中村氏に語ってもらった(以下、中村氏の寄稿)。
※デロイト トーマツ ミック経済研究所 『エッジAIコンピューティング市場の実態と将来展望 2021年度版』 「エッジAIプラットフォームのベンダシェア(台数)」による
リテール業の収益性改善をもたらす「エッジAI」という技術
現在、日本のみならず世界的規模でリテール業界に大きな変化が訪れようとしています。ファミリーマートが進める「FamilyMartVision(ファミリーマートビジョン)」などのリテールメディアや、無人店舗を想像する読者も多いでしょう。
どちらも、リテール業界にとって重要な課題である「店舗当たりの収益性改善」を解決する取り組みで、各社がこぞって既存ビジネスの生産性向上や新規ビジネス創出に取り組んでいます。また同時に、労働人口の減少などによる人手不足も顕著であり、より効率的なオペレーションが求められています。
これらの課題を解決する手段として注目されているのが、エッジAIを使ったIoTデータ収集とその活用です。リテールメディアや無人店舗にも欠かせない技術で、人がいる空間をデータ化し、よりよい施策の立案を迅速に行えるようになります。エッジAIの登場で、データを活用した新しいサービスの提供に向けた土台が整ってきました。
具体的には、センサーやカメラ、マイクといったIoTデバイスを使い、人の動きや音声を匿名化してデータ化。データ解析の知見がたまったら、実店舗の売上改善につなげられるだけではなく、新事業を創出して外部に売ることで、今まで以上の利益を生むことも見据えられるのです。
なお、ここでいう「人がいる空間」とは、店舗はもちろん工場や人が行き交う施設、交通機関なども含まれます。データを活用したビジネス改善はWebサービスでは当然のように行われていますが、リアル産業におけるデータ活用はまだまだ開拓されておらず、大きなチャンスがあるといえます。
とはいえ、IoTデバイスで人の動きや音声をデータ化し、AIが解析して最適化するという話は、数年前のAIブームやそのさらに前から言われ続けてきました。しかし、当時はそういった活用が定着しませんでした。かつて広がらなかったものが、なぜ再び注目されているのでしょうか。そのカギを握るのがエッジAI技術の進化です。
関連記事
- ファミマが掲げる“無人1000店” 小型・無人化で開拓する新たな商圏とは?
コロナ禍の影響もあって注目を集めている無人決済店舗。その導入で1歩リードしているコンビニが、ファミリーマートだ。なぜファミマは導入を加速させているのか。担当者に聞いた。 - 狙うは都心攻勢? 「スーパーの優等生」ヤオコーが仕掛けた一手を“深読み”してみた
ヤオコーが組織改正を発表した。3月1日付で、「SPA推進部」を新設する。同社によると「大きく変わることはない」ということだが、専門家に話を聞くと、実は重要な一手かもしれない。 - 広い売り場と大きな看板の店舗を劇的に“縮小” 洋服の青山が導入する「デジタル・ラボ」の威力
近年、実店舗とオンラインを融合させたOMO型店舗の出店が加速。2016年から開発に力を入れているのが「洋服の青山」を展開する青山商事だ。独自で開発した「デジタル・ラボ」の導入を進めている。 - 約150台のAIカメラで何が分かるのか イオン初の本格スマートストアの全貌
イオンリテールが運営する「イオンスタイル川口」は、デジタル技術を駆使した同社初の「本格的なスマートストア」と説明する。一体どのようになっているのか - 御堂筋の歩道を広げてベンチを設置 人の動きはどうなったのか
梅田と難波を結ぶメインストリート「御堂筋」では、2017年からスマートストリート化を掲げた社会実験「御堂筋チャレンジ」が行われている。6車線のうち2車線をつぶして歩道に。GPSやカメラで人流解析をしたところ、どんな変化が見られたのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.