人のいる全ての空間を「資産」に変える! リテール業界の飛躍を後押しするエッジAIとは:日本のリアル産業を救う“エッジAI最前線”(3/4 ページ)
リテール業界はエッジAIを使ったIoTによって飛躍的に進化できる──そう話すのは、AI開発スタートアップのIdein(イデイン、東京都千代田区)中村晃一CEO。数年前のAIブームは沈静化したように見えるが、ここにきて再び注目が集まっている。そのトリガーとなる技術が「エッジAI」である。
クラウドを使ったAIとエッジAIは何が違うの?
エッジAIと比較されるのが、クラウドを使ったAIです。デバイスで集めたデータを一度クラウド上のデータセンターに送りAIで解析する方式で、数年前のAIブーム時にはクラウドを使ったAIが主流でした。しかし、いくつかの課題が生じ普及が進まなかったといえます。
その課題の1つがコストです。カメラで取得した映像といった大量データをクラウドに送り続けると、通信コストやサーバへの負荷がかさみます。例えば、大規模な商業施設や工場などで複数のデバイスを数千台単位で稼働させる場合は莫大なコストが発生してしまいます。
もう一つの大きな課題は個人情報の取り扱いです。2010年代後半、欧州を中心に個人情報をクラウドに集約することへの規制が強まりました。
これらの課題を踏まえ、近年はエッジAIを使った方式に注目が集まってきました。エッジAIでは、AIがデバイス側で処理を行うのでクラウドとの通信は少なく済みます。また個人情報もデバイス内で処理するので、クラウドに送信されるのは最低限必要な情報のみです。
一方、エッジAIではデバイス側で複雑な処理を行う都合上、デバイスに高性能なプロセッサを搭載する必要があります。しかしここ数年で安価で高品質なプロセッサが普及したことにより、この課題は解決されつつあります。
いずれにせよ、世の中のニーズと技術の進化がかみ合ったことで、エッジAIを使ってコストを抑えながら人のデータを解析するシステムが実装可能になってきました。つまり、ユニットエコノミクス(1顧客あたりの採算性)が向上してきたのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ファミマが掲げる“無人1000店” 小型・無人化で開拓する新たな商圏とは?
コロナ禍の影響もあって注目を集めている無人決済店舗。その導入で1歩リードしているコンビニが、ファミリーマートだ。なぜファミマは導入を加速させているのか。担当者に聞いた。
狙うは都心攻勢? 「スーパーの優等生」ヤオコーが仕掛けた一手を“深読み”してみた
ヤオコーが組織改正を発表した。3月1日付で、「SPA推進部」を新設する。同社によると「大きく変わることはない」ということだが、専門家に話を聞くと、実は重要な一手かもしれない。
広い売り場と大きな看板の店舗を劇的に“縮小” 洋服の青山が導入する「デジタル・ラボ」の威力
近年、実店舗とオンラインを融合させたOMO型店舗の出店が加速。2016年から開発に力を入れているのが「洋服の青山」を展開する青山商事だ。独自で開発した「デジタル・ラボ」の導入を進めている。
約150台のAIカメラで何が分かるのか イオン初の本格スマートストアの全貌
イオンリテールが運営する「イオンスタイル川口」は、デジタル技術を駆使した同社初の「本格的なスマートストア」と説明する。一体どのようになっているのか
御堂筋の歩道を広げてベンチを設置 人の動きはどうなったのか
梅田と難波を結ぶメインストリート「御堂筋」では、2017年からスマートストリート化を掲げた社会実験「御堂筋チャレンジ」が行われている。6車線のうち2車線をつぶして歩道に。GPSやカメラで人流解析をしたところ、どんな変化が見られたのか。
