2023年は「ハイブリッド再評価の年」になるかもしれないワケ:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(2/3 ページ)
「サクラ」「eKクロスEV」の躍進などを受け、2022年は「EV大衆化元年」とも呼べるような年でした。では、23年の自動車業界はどのような年になるのでしょうか?
欲しいのはEV、ではなく「安くて良いクルマ」
つまり、「EVの話題は大きかったけれど、たくさん売れたわけではない」のが22年だったのです。
売れていない原因はいくつも考えられます。最大の障壁は「車両価格の高さ」でしょう。トヨタの販売する「bZ4X」はミッドサイズのSUVであるのに600万円からという値付けです。日産のEVであるミッドサイズSUVの「アリア」も539万円から。トヨタのエンジン車であるミッドサイズSUVの「RAV4」は293万8000円から。同じサイズ感なのに、エンジン車からEVになると、それだけで200〜300万円も高くなっています。
日産「サクラ」と三菱自動車「eKクロスEV」が注目されたのは、EVという商品性もさることながら、補助金をうまく使うと約180万円から買えるという価格も大きいはず。200万円を切れば、エンジン車とも十分互角に戦えるというわけです。
そんな昨年の動向を鑑みれば、1月末に発売を予定している中国のBYDによるEV「ATTO3」も、それほど多く売れるとは考えにくいでしょう。「ATTO3」は、58.56kWhのリチウムイオン電池を搭載して、最大485キロ(WLTCモード相当)の航続距離を誇る、ミッドサイズのSUVです。その価格は440万円で、性能からいえば輸入ブランドのEVや日系ブランドのEVよりも割安感があります。しかし、ガソリン車と考えれば440万円は安くはありません。ガソリン車であれば、トヨタの「クラウン」も435万円から販売されています。
「EVだから、クラウンよりも高くて仕方ないね」と買ってくれる人は、どれほどいるのでしょうか。一般的な消費者は、「安くて良いクルマ」を求めています。「環境によいから高くても我慢しよう」というのは、余裕のある人だけができる行為です。「EVは良いかもしれないが、高くて現実には手が出ない」というのが庶民目線でしょう。
とはいえ、世論が環境を軽視しているわけではありません。国を挙げてのカーボンニュートラル宣言もありますから、そういう意味でもEVを諦めるわけもいきません。さあ困りました、どうするのしょうか?
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