最善のエコカーは「PHEV」か「HEV」か 現時点での最適解とは:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
クルマを取り巻く環境がますます厳しくなっている。日本の技術力や開発力が問われ、解決策を示せれば国際的な注目度が高まるのは言うまでもない。これから迎える正念場に対して、どの道を進めばいいのだろうか。
現時点で最も現実的な解決策はPHEVなのかHEVなのか
現時点でリチウムが高騰していることは、これからBEVをクルマの主流とするには困難にさせる材料として十分だ。もちろんこれからの主役は純ガソリン車でないことは明白だ。しかし電動車なら何でも同じ、何でもいいというわけではない。
BEVはまだ幾度もブレイクスルーが起こらなければ、誰もが安心して快適に使い続けられるクルマには成り得ない。FCV(燃料電池自動車)のように極めて限定的な使い方をするには、すでに十分な性能は確保している。日本では日産サクラが使える環境で、現時点でベストなEVライフだろう。
プラグインハイブリッドは100キロメートル程度の中距離移動までは効率のいい電動車に思えるかもしれないが、そこには大きな盲点がある。それはバッテリーに蓄電された電力を使い果たしたら、あとはエンジンで重たいバッテリーを運ぶクルマになってしまう、ということだ。
PHEVでもEVのように回生充電はできるし、シリーズハイブリッドのようにエンジンで発電できるモデルもあるじゃないか、という意見も出てくるだろう。しかしそれらはPHEVのバッテリーを満充電させるものではなく、エンジンでクルマを走らせるものと環境性能は大差ないものになってしまう。
つまり電欠を防ぐためには有効だが、普段はエンジンとその燃料をEVが運んでいるだけになる。年に数回の遠出のためにPHEVに乗っているのでは、充電設備が普及している地域では無駄が多いことになる。
さらに昨今のバイオガソリンを混ぜた燃料は、想像以上に劣化が早く、本来のオクタン価(燃料のノッキングのしにくさを示す尺度)向上効果は消滅してしまうだけでなく、エンジンの調子を崩す恐れすらある。そうなるとほとんど毎日プラグインの充電だけで走っているクルマは燃料の劣化が避けられず、エンジンの不調や燃費悪化を招く可能性もあるのだ。
さらにバッテリーの劣化も避けられないから、クルマの価値は短期間で大きく下がり、10年も経過すればバッテリーを交換するか廃車してリサイクルするかという判断に追い込まれる。このあたりはEVとまったく同じなのだ。
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