ルノー・日産アライアンス再始動 内田CEOの手腕が光った:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
ルノーグループ、日産自動車、三菱自動車は2月6日、資本提携の見直しに関する説明会を開催した。登壇者全員が互いに感謝の言葉を述べるところから始まった異例の会見。その場で語られたのは……。
現在のマーケットはどうか
2021年で見ると、ルノーのグローバル販売実績は170万台。対して日産は388万台で2倍を超えている。資本の支配構造と業績、つまり稼ぐ力がひっくり返ってしまったわけだ。しかもルノーが10万台以上を販売しているマーケットはフランス、ドイツ、ロシア、ブラジルで、僅差でインドが10万台を下回っている。残念なことに次の決算では、ここからさらにロシアのマーケットが消滅することになる。
ルノーのビジネスのほとんどは欧州に偏っている。一方、日産の21年のグローバル実績を見ると、中国で138万台、米国で89万台、日本で43万台、欧州で34万台となる。つまり、実績から見る限り、日産は立派なグローバル企業だが、ルノーは欧州のローカル企業に過ぎないことを指し示している。もちろん次世代マーケットとして期待されるインドとブラジルという希望はあるにはあるのだが、それは今を生き延びてからの話である。
マーケットだけではない。商品においても、日産は実質的なAセグメントに相当する軽のデイズやサクラから、Eセグメントのスカイラインまで、さらにスポーツ系のGT-RやフェアレディZと、若干手薄な部分はあるものの、一応フルラインアップをそろえるが、ルノーはBセグCセグに商品が集中しており層が薄い。
特にこれからZEV法(カリフォルニアを中心とするゼロ・エミッション・ビークル法)類似の各国法規による「BEV販売台数義務付け」化のために、ある程度の台数、BEVを売らないことには罰金で経営が圧迫される。そうなるとプレミアムクラスの商品を持っているかどうかが先行きを左右する。バッテリー価格をうまく吸収できる価格帯のプレミアム系商品が必要なのだ。ルノーにはそれがないのがキツい。具体的に言えば600万円以上でのビジネスがあまりにも手薄である。
そのバッテリーも問題だ。バッテリーは安全上、コスト上、地産地消が望ましい。運びにくいのだ。中米日欧でバッテリーを手当てしなくてはならない日産と、場合によっては欧州だけで済むルノーでは事情が大きく違う。事情が違えば、限られたバッテリーメーカーとの交渉の仕方が違ってくるのは当然だ。
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