台湾の「海底ケーブル切断事件」は対岸の火事ではない 経済・ビジネスにどんな打撃が?:世界を読み解くニュース・サロン(1/2 ページ)
台湾メディアが、2月2日の夜に「台湾の本島と離島の馬祖列島を結ぶ通信用の海底ケーブルが切断された」と報じた。海底ケーブル切断は経済・ビジネスに多大な影響を与える可能性が高い。どういうことかというと……
先日、台湾メディアが不穏なニュースを報じた。2月2日の夜に、台湾の本島と離島の馬祖列島を結ぶ通信用の海底ケーブルが切断された。さらに2月8日の昼間にも、別のケーブルが切断されたという。
台湾当局によれば、海底ケーブルが切断された時間帯に中国船がその付近を通過していたようだ。2日には中国の漁船が、8日には中国船籍の貨物船が航行していた。この事件が単なる事故かどうかは分かっていない。もちろん故意に切断された可能性もある。
最近では、米国と中国が安全保障のリスクであるとして「スパイ気球」をめぐって言い争いをしているが、その観点で言えば海底ケーブルもリスクの高いインフラである。
なぜなら海底ケーブルとは、インターネットの通信を運ぶ光ケーブルのことで、世界のインターネット通信の95%以上が海底ケーブルを通って行き来しているからだ。つまり海底ケーブルが切れてしまうと、インターネットが使えなくなってしまう。台湾の中華電信によれば、現在は影響を受けた通信サービスの代わりにマイクロ波伝送装置などを使ってしのいでいるという。
海底ケーブル切断という事件が、国や地域の生活や経済に大きな影響を及ぼすことが分かるだろう。国家の危機にもつながるような事態を招きかねないため、セキュリティ界隈でもそのリスクが注目されている。
確かに、最近ではイーロン・マスク氏がスターリンクという個人でも使える衛星インターネット通信の装置を販売するなど、新たな通信技術も誕生している。ただ、海底ケーブルは衛星よりも安価で通信も安定しているため、この瞬間にも世界中を駆け巡っているインターネットの通信のほとんどが海底ケーブルに依存している。
そんな海底ケーブルは、それぞれの国で政府や民間が設置している。現在、わたしたちはWi-Fiなどを使ってワイヤレスでネットワークに接続しているため、その裏で全てのデータが海底ケーブルで運ばれていることを知らない人も少なくないだろう。
2020年12月時点での世界の海底ケーブル数は475本となっている。ただこの数字は、新しいケーブルが完成したり、古いケーブルが引退したりするため変動する。日本ではNECなどが提供する高性能な海底ケーブルが、世界のインターネットをつなぐ重要なインフラとなっている。
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