「理想のリーダーになれない」と悩む人が知らない、優れたリーダーが「しないこと」:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/3 ページ)
近年、若い世代にリーダーを任せる企業が増えた。その結果、肩に力が入りすぎているリーダーをよく見かける。本記事のテーマは「優れたリーダーは〇〇をしている!」という正解ではなく、「優れたリーダーがしないこと」。その中から見えてくる、リーダーの本来の役割とは──?
そんな流れに「ちょっと待った!」と意を唱えたのが、米カーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授です。1990年代、ケリー教授は「組織運営においてリーダーの及ぼす影響力は10%程度で、残りの90%は、部下である人々の力が左右する」というフォロワーシップ理論を提唱し、リーダー神話ともいわれるリーダーのカリスマ性を否定しました(著書『The Power of Followership』)。
フォロワー次第というフォロワーシップ理論は「人は環境で変わるし、人は環境を変えることもできる」という人間の摂理に基づいています。つまり、リーダーが真のリーダーになるために大切なのは、理想のリーダー像に近づく努力ではなく、リーダーが自分の“チーム”に誇りを持てるかどうかなのです。
とはいえ、優秀な部下=フォロワーさえいればその組織が成功するわけではありません。優秀なフォロワーは常に優秀なリーダーを求め、優秀なリーダーだと彼らが認めたリーダーに対してのみ、フォロワーシップを発揮します。前出のケリー教授がリーダーの影響力とした10%とは、フォロワーに選ばれるための資質といえます。
では、どんなリーダーをフォロワーは選ぶのでしょうか?
これまで蓄積されたフォロワーシップに関する研究を参考にすると、大きく3つに分けることが可能です。
1.明確なビジョン
「やってみたい、やるべきだ!」とフォロワーを魅了する明確なビジョンをリーダーが示せるかどうどうか。
2.貢献力
リーダー自身が「ビジョン達成」のために、どれだけエネルギーをそそぎ、こだわっているか。
3.批判力
リーダーの言動や判断に対する意見、批判、組織が機能するために自分の考えなどを、リーダーに伝える機会があると同時に、それに聞く耳を持っているリーダーかどうか。
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