押井守が審査委員長 国際アニメ映画祭を「新潟」で開く理由:「やりがい搾取」改善のきっかけに(1/4 ページ)
3月17日から22日にかけて、新潟市で国際アニメーション映画祭が開かれる。井上伸一郎・フェスティバル・ディレクターと、ジェネラルプロデューサーを務める、アニメ製作会社・ジェンコ代表取締役の真木太郎氏に狙いを聞いた。
日本が世界に誇る文化であるアニメ。その世界的評価は年々高まり、多くの海外企業が日本のアニメ産業に注目している。インターネット動画配信サービスのNetflixは2018年以降、複数の日本のアニメ制作会社と包括的業務提携を締結し、Netflixオリジナルアニメ作品の制作に参画している。
世界を代表するエンタメ企業、ウォルト・ディズニー・カンパニーもソニーグループのアニメ製作会社アニプレックスと提携し、自社動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」の配信を念頭に置いたアニメ作品の制作を進めている。22年11月には、講談社との戦略的協業の拡大を発表した。
このように海外の巨大企業からも日本のアニメは注目されている状況だ。
新潟市で国際アニメ映画祭
3月17日から22日にかけて、新潟市で国際アニメーション映画祭が開かれる。
主催は新潟国際アニメーション映画祭実行委員会で、審査委員長は映画監督の押井守氏、映画祭のフェスティバル・ディレクターにはKADOKAWA元副社長で、現在は上級顧問を務める井上伸一郎氏、プログラムディレクターはジャーナリストの数土直志氏が務める。有料入場者数は1万2000人を見込む。まさに、日本のアニメ業界の重鎮が推し進める一大プロジェクトだ。
どのような狙いから新潟で新たに国際アニメ映画祭を開くのか。井上伸一郎・フェスティバル・ディレクターと、映画祭実行委員長の堀越謙三氏とともに企画制作も務め、ジェネラルプロデューサーを務める、アニメ製作会社・ジェンコ代表取締役の真木太郎氏に聞いた。
井上 伸一郎 1959年生まれ。東京都出身。アニメック(ラポート)副編集長を経て、 「月刊ニュータイプ」創刊に副編集長として参加。87年 ザテレビジョンに入社。 以後、雑誌・書籍の編集者、アニメ・実写映画のプロデューサーを歴任。07年、角川書店社長、19年KADOKAWA副社長に就任。 現在はKADOKAWA上級顧問 エグゼクティブ・フェロー。
真木太郎 1955年生まれ、岐阜県出身。97年に業界では珍しい作品企画・プロデュース専門会社であるジェンコを設立。今敏監督作品『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』や『機動警察パトレイバー the Movie』『ソードアート・オンライン』などを次々とプロデュース。2017年には『この世界の片隅に』で第36回藤本賞・特別賞を受賞。2023年開催の第1回新潟国際アニメーション映画祭にて東京事務局長に就任
映画祭の醍醐味
――新潟国際アニメーション映画祭を新たに始めようとした経緯について教えてください。
真木: 新潟に「開志専門職大学」という大学があるのですが、そこにアニメ・マンガ学部があります。この学部は21年にできたばかりです。教授をしている堀越謙三さんと話をしていて、「アニメーションの映画祭を新潟で企画をしたら面白い」という話になったんですね。
アニメーションだけの映画祭ってあるにはあるんだけど、日本ではそんなに多くないし、規模が小さかったり、アート系に偏ったりといった傾向があったんです。それで、アート寄りだけではない、エンターテインメント寄りの商業作品も評価していけるような言論空間が日本に欲しいねという話になったんです。
――国内でアニメを扱う映画祭では東京国際映画祭が著名です。ただアニメだけを扱ったものは、それほど多くはない気がします。
井上: 1985年から広島市で「広島国際アニメーションフェスティバル」が、2014年からは北海道千歳市の新千歳空港で「新千歳空港国際アニメーション映画祭」が開かれていますが、いずれもアート寄りなのが特徴ですね。
――それで新潟市で、一般の商業作品も対象にした国際映画祭を開いていこうとなったわけですね。新潟という地方都市で実施する狙いは何なのでしょうか。
真木: いま世界で最も有名なアニメーション映画祭というと、フランスのアヌシーで1960年から続いている「アヌシー国際アニメーション映画祭」なのですが、これも人口12万人ほどの地方都市で開催されているんですね。他にも「国際映画祭」と付くものは、地方都市で開催されているものが少なくありません。
街の規模がある程度小さいほうが映画祭の期間中お祭り一色になりやすいですし、一つのお店などに世界中の業界関係者が集まりやすくなるんですよね。僕もアヌシーには何度も行っていますが、みんなすごく楽しくて仲間意識が生まれてきます。これが映画祭の醍醐味の一つだと考えています。
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