押井守が審査委員長 国際アニメ映画祭を「新潟」で開く理由:「やりがい搾取」改善のきっかけに(2/4 ページ)
3月17日から22日にかけて、新潟市で国際アニメーション映画祭が開かれる。井上伸一郎・フェスティバル・ディレクターと、ジェネラルプロデューサーを務める、アニメ製作会社・ジェンコ代表取締役の真木太郎氏に狙いを聞いた。
AnimeJapanに合わせて開催
――確かに新潟の隣の山形県では、「山形国際ドキュメンタリー映画祭」が山形市で開かれていますね。
真木: 世界中から一つの街に同業者が集まって、わきあいあいと酒を飲んで作品について語り合えるのは素晴らしいですよね。ああいう言論空間をアニメでも、日本で作りたいなと思ったのが一番の理由ですね。
――新潟市では、「新潟市マンガ・アニメ情報館」や「新潟市マンガの家」という文化施設を市で持っていたり、「がたふぇす」というアニメ・マンガをテーマにした展示イベントも毎年開かれています。もともとアニメやマンガといった文化に理解のある地域だといえると思います。
真木: そうなんですよ。マンガやアニメの集客で、いろんな自治体が無視できないところまで来ている中、新潟市は10年以上前から積極的に力を入れているんです。これらの施設やイベントは既に新潟市を代表する顔の一つになっているとも言えます。
一方で私たちがやろうとしている国際アニメ映画祭も、今回1度きりではなく、長く続けていく方針です。そういう土壌がもともとあり、映画祭の提案を市の担当の方にした時にも快く応じてくれました。「え、なんでアニメ?」とならないのは大きいと思います。
――3月17日から22日まで開催されますが、この時期にした狙いはあるのでしょうか。
井上: 毎年3月下旬に東京ビッグサイトで「AnimeJapan」という世界的なアニメイベントが開かれるのですが、海外から訪れる方でも、このイベントと合わせて参加しやすいよう、この日程にした狙いはあります。国内のアニメファンはもちろん、海外の方にも合わせて楽しんでもらえるイベントにしていきたいと思っています。
真木: 他にも、3月の新潟はまだ雪も残っていて、こういう景色って海外の方が「これが日本だ」と喜んでくれるんですよね。温泉も街の近くにあって、魚もお酒もおいしい地域ですから、映画祭以外にも楽しめる要素が多いのではないかと考えています。
――街を挙げたイベントということで、周辺地域を含めた回遊策も考える必要があると思います。
井上: 当然、新潟市のイベントでもあるので、映画祭も楽しんでいただき、温泉や食事も楽しんでもらえるような、複合的な楽しみ方をできるようにしていきたいですよね。私たちもカンヌやアヌシーに行くと現地でロゼワインを飲んだりして盛り上がるので、そういった部分を含めた情報発信をしていけたらと考えています。
真木: 映画祭を息の長いイベントにしていくためには、地元の協力が必要不可欠です。映画祭の実行委員会だけでなく、地元の方も一致団結して「映画祭を支えていくんだ!」とならないとなかなか長続きしません。映画祭だけでなく地域全体が盛り上がることで、地元の理解を得ていくのも重要ですね。
井上: 私は東京国際映画祭の運営にも関わっているのですが、東京は間口があまりにも広いので、街全体が映画祭を楽しんでいるというムード作りにいつも頭を使っています。その点、新潟という集中したエリアにフォーカスができるのは非常に強みかなと思いますね。国内外の多くの方が新潟に集まれるのは非常に意義深いことだと考えています。
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