押井守が審査委員長 国際アニメ映画祭を「新潟」で開く理由:「やりがい搾取」改善のきっかけに(4/4 ページ)
3月17日から22日にかけて、新潟市で国際アニメーション映画祭が開かれる。井上伸一郎・フェスティバル・ディレクターと、ジェネラルプロデューサーを務める、アニメ製作会社・ジェンコ代表取締役の真木太郎氏に狙いを聞いた。
変化の中にあるアニメ業界の制作環境
――一方で、アニメ業界ではさまざまな課題を依然として抱えていると思います。こうした課題解決にどのように映画祭を活用していきたいですか。
真木: 人材確保や働き方について、いまお話しした一方で、アニメ業界は決して恵まれた環境ではないんですよね。「やりがい搾取」という言葉に代表されるように、3K4K当たり前、「好きでやっているんだからいいだろう」といって低賃金で働かせる動きもまだ珍しくありません。
クリエイティブな仕事に対してギャランティーを含めもっと高く評価されるような仕組み作りにつながるきっかけにしていきたいですね。そういう意味でも、アニメ業界に入りたいと思う人を増やして、全体の体力もつけることも大事だと考えています。
井上: 実はいま、アニメの業界は大転換期に入っていて、海外の動画配信サイトをはじめ大きな資本が入ってきています。日本のアニメは海外からいま高く評価されていて、それに見合うようなお金も入ってくるようになっています。
既にDXで働き方改革が進んでいることはお話しましたが、さらに待遇改善の波もきています。いろんな波が同時に来ていて、どうすれば今後、日本のアニメ業界はさらに良くなるのか、それを考えるきっかけにこの映画祭がなるといいなと思っていますね。
――この一例として、これまで放送枠などの都合によりヒット作でも2期までしかテレビ放送されなかった深夜アニメ作品も少なくありませんでした。それが近年、『鬼滅の刃』をはじめ、3期以降も作られる作品が増えてきています。この背景には、動画配信サービスの充実による影響も少なくないといわれています。
井上: 動画配信サービスは作品の視聴時間が評価の対象になります。そうなってくると、当然ながら本数が多いほうが優位になるわけですね。視聴者の方が、あるテレビシリーズアニメ作品を一気見すると、動画配信サービス内では高く評価されるというわけですね。
ここが動画配信サービスでの評価基準の一つ重要なところであるので、1回大きな当たりが出ると、2期、3期以降も作りやすくなるし、長続きする作品が増えれば、その分スタッフの雇用の安定にもつながります。
全部ではないにせよ、アニメ業界の制作環境はだいぶ変わってきていますね。
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