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バッテリー地産地消時代、日米欧は中国に対抗できるのか池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)

世界中の自動車メーカーがバッテリーの地産地消化に向けて進んでいるが、現状EVシフトでもうかるのはバッテリーを生産する中国ばかりとの声もある。日米欧は中国に対抗できるのだろうか。

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 現在、自動車産業では熾烈(しれつ)なバッテリー争奪戦が展開されている。速報レベルでは「中国でバッテリーが余り始めている」ことも伝えられ始めているが、ではそれによって今後、世界的なバッテリー不足が解消されて行くかといえば、そういう話にはならないだろう。

 実は今、バッテリーは「地産地消」化に向かってまっしぐらの状況になっており、どこかで余ったから他へ持って行こう、というわけにはいかないからだ。

バッテリーは“ナマモノ”


テスラ初のEV「ロードスター」は現在パナソニックに吸収された三洋電機の汎用筒形バッテリー18650を大量に搭載することで成立した。当時からEVの成立の決め手はバッテリーであった

 まずは技術領域の話から。バッテリーは多くの自動車部品と違う性格を持っている。それはそもそもバッテリーが“ナマモノ”だからだ。「鮮度が高いうちにクルマに組み上げて販売してしまいたい」部品なのである。

 どうしてナマモノか。クルマに載せられて、ある程度の充放電サイクルが繰り返されていればいいのだが、搭載されず、運転で使ってもらえない状態だと、電子の移動が起こらないせいで、電解液中や電極に金属結晶が析出したりする。バッテリーは充放電サイクルが生きていることを前提に作られている部品だと考えてよい。

 分かりやすく言うと、充電と放電はそれぞれ逆の方向に作用するので、普段は電子が陽極へ集まったり、負極に集まったりして反応を往復し、寄せては返す波のようにバランスを取っている。なので、その往復運動がなくなると、ゆっくりと一方的な移動が続いたり、どこかにわだかまったりして、そこで結晶化が発生して不可逆に固定化する。

 するとどうなるか。電子の通り道を結晶が邪魔したり、電極が劣化したり、最悪の場合は結晶がセパレーターをまたいで電極間をショートさせ、火災に至るリスクがあるのだ。だからバッテリーは、作り置きをできるだけ避けたい。「できれば使う分だけ作って、すぐクルマに組み込み、充放電サイクルに入れたい」と、過去に話を聞いたバッテリー技術者たちは語っていた。

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