バッテリー地産地消時代、日米欧は中国に対抗できるのか:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)
世界中の自動車メーカーがバッテリーの地産地消化に向けて進んでいるが、現状EVシフトでもうかるのはバッテリーを生産する中国ばかりとの声もある。日米欧は中国に対抗できるのだろうか。
地産地消ができるのか?
要するに「バッテリーを自前で作らないと、EVを作ってもちっとももうからない」。だから「中国産を締め出したい」し、自国、あるいはサプライチェーンが守れる範囲で「バッテリーの原料を確保したい」。これが政治によってバッテリーが地産地消に向かう道筋だ。
とはいえ、現実に地産地消ができるのか? 全メーカーがそれを自前でやるのはもちろん無理だから、EVを主戦場にしようとするならば、戦線を整理せねばならない。それはつまり生産台数を削減することだ。
ロシアのウクライナ侵攻によるグローバル化の急激な反転、その影響は、巡り巡ってEV(に使われる大きくて重く、原料に貴重な資源を使うバッテリー)が一番大きく喰らうのかもしれない。
もうちょっと肩の力を抜いて〆を付けるなら「まあ、いろいろ地産地消の工夫をしても、ダンピング上等で勝負してくる中国とそれ以外の差が大きすぎるよなあ」ということになる。詰まるところ、自前の鉱山を10年がかりで開発するか、中国となんとかうまいことやっていくか。それとも中国ととことん敵対して、利権を巻き上げるか。いずれにしてもどれもイージーな道のりではないと思う。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
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