ワークマンの「おしゃれシフト」は成功するのか アパレル専門家が指摘する新業態への懸念:磯部孝のアパレル最前線(4/5 ページ)
昨今、これまでの作業ウェアから一般向けの商品を拡大しているワークマン。ファッション性を重視した新業態「ワークマン カラーズ」も発表した。一方で、アパレル専門家はワークマンの「おしゃれシフト」へ懸念を示す。
女性客層拡大の決定打となったのは「滑りにくい靴(ファイングリップレディース)」だ。もともとコックなどが厨房用として履いていた「シェフメイト」という靴が、滑りにくい妊婦用シューズとして話題を呼び、売れた。
こうして、本来の作業ウェア以外の一般客向け商品の品ぞろえを増やしていき、18年にららぽーと立川立飛でWORKMAN plus1号店をオープンした。当時の記事によると、事前の折込チラシの配布などの影響もあってか、オープン初日は30分のレジ待ち行列が発生するほどの混雑に。通常のワークマン店舗より4割ほど小さい60坪のスペースながら、平日の売り上げは50万円以上、土日祝は100万円以上の売り上げを誇る繁盛店となり、業界からも大注目の店舗となった。
一般客を想定した品ぞろえを進めてきた同社にとって、この成功は新業態の出店と業態変更に弾みをつけた。また、当時の来店客の45%が女性で、しかもそのうち45%が初めてワークマンを訪れた人たちだったという。
春夏商品は5テーマが軸
さて、話を発表会に戻そう。
23年春夏商品は(1)Vivid、(2)Trend、(3)Travl 、(4)Nature、(5)Toughという5つのテーマが軸になっている。
まず、「(5)Tough」。これはワークマンの本業中の本業ともいえるテーマで、耐久性から耐水圧の高い撥水やマルチ機能搭載のウェアリングだ。スタイリッシュな作業服がそろうラインアップとなっている。
「(1)Vivid」もワークマン本来の力が発揮できるテーマだ。夜間作業など、危険の伴う現場の作業服は、目立った色でないと安全性が担保されないことから、赤、黄色といった目立った色使いは昔からワークマンが得意分野としていたからだ。今回のワークマン カラーズというネーミングも、このテーマからとったとのこと。
「(3)Travel」というアウトドアシーンを加えられるテーマも、ワークマンの機能性を得意とした商品とは高相性といえる。アウトドアよりも規模の大きなトラベルにまで、シーンを広げている。
「(4)Nature」は、サスティナブルがコンセプト。エコ原料や地球環境を考えた製造工程で作られる商品は、客へコスト負担を求めずに展開する構えだ。ワークマンは30年までにPB商品の半分はサスティナブル商品にする目標を掲げており、今後ラインアップが広がっていくことが想定される。
最後、「(2)Trend」は、レディス市場へのさらなる参入を見込んで設定したものだろう。しかし、既に人気を確立しているユニクロなどと真正面から戦うことは避け、機能性の高さと多ポケットといった収納力による快適さを軸にしたデザインでアピールしていく考えのようだ。
関連記事
- ”ファッション性”を強調した初の「#ワークマン女子」が大阪・駅ビルに 他の店舗とどう違う?
WORKMAN Shoesとの複合店である「#ワークマン女子 天王寺MIO店」が大阪の駅ビルに3月3日、オープンした。ワークマン初の「ファッション性」を強調した店舗ということで、狙いや注目製品、今後の展望について取材した。 - なか卯が今でも「250円の朝食」を提供している理由 ライバルは牛丼チェーンではなかった
なか卯は、業界でも屈指のリーズナブルな朝食メニューを提供している。物価高騰が叫ばれる中で、なぜ低価格を維持しているのか。その理由を担当者に聞いた。 - 「想定以上の売り上げ」──期間限定47%増量商品、品切れ相次ぐ なぜローソンは値下げを選ばなかったのか
ローソンが価格据え置きで人気商品の重量を47%増量した期間限定キャンペーン「盛りすぎ!チャレンジ」を開始し、その取り組みが注目を集めている。キャンペーン開始以降の販売も好調で、一部商品で品切れが相次ぐほどだ。 - コメダは「ボリュームありすぎ」だからいい 4人家族がたどり着いた朝食の“最適解”
大手喫茶チェーン「コメダ珈琲店」はボリュームの多さが特徴。4人家族で朝食をとるのには最適な場所だという。その理由は? - 「580円の朝焼肉」誰が食べている? 焼肉ライクが開店を“4時間”早めてまで始めたワケ
焼肉ライクは「朝焼肉セット」という朝食メニューを2020年8月から展開している。コロナ禍で時短営業を余儀なくされ、「朝の時間帯」に活路を見出したのがきっかけ。今はどのように利用されているのか取材した。 - 脱「1皿100円」で沈むスシロー、くら寿司 値上げが受け入れられない根本原因
くら寿司が2022年10月期決算を発表し、2期連続の営業赤字となった。回転寿司業界では値上げが進み、「1皿100円」時代が終焉を迎えようとしている。一方で、値上げは反発を招くもの。どうすればいいのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.