ファストフード店のメニューが“見づらく”作られている、納得の理由:行動経済学で読み解く(2/3 ページ)
ファストフード店のメニュー表に隠されたおもしろいマーケティングがある。消費者の購買選択が、実は企業にそっと誘導された結果によるものかもしれないというのだ。東京大学大学院で行動経済学を教える教授に話を聞いたところ……。
モバイルオーダーではどうなる?
ここまで、店頭でヒューリスティック処理が起こりやすい理由を説明してきた。では、コロナ禍を機に導入が進んだ「モバイルオーダー」はどうだろうか。整頓されたメニューを誰にも邪魔されることなく見られるので、ノイズが少ないように感じる。果たして、モバイルオーダーでもヒューリスティック処理は働くのだろうか。
「クーポン表示などの金銭的な施策は、ヒューリスティック処理を引き起こすには有用です。アプリ限定で利用できるクーポンを配布することで、特定の商品が選ばれやすくなります。スマートフォンの普及に伴い、クーポンを配布・利用しやすくなった状況も後押ししています。今後、『あなたへのおすすめメニュー』のように個人の好みに合わせたメニューが提案されるようになってくると、より顧客の意志決定に影響を与えるかもしれません」(阿部氏)
では、店頭とアプリではどちらがヒューリスティック処理を誘導しやすいのだろうか。阿部氏は、店頭とアプリで誘導のしやすさは大きく変わるわけではないと話す。
例えば、店頭のメニューでは、新商品を大々的に訴求していたり、単品価格よりもセット価格の方がパッと見つけられるように太字で記載されていたりする。一方、アプリでは訴求したいメニューのクーポンをポップアップで表示したり、購入してほしいメニューが目に留まりやすくなるように設計されたりしている。それぞれの利点を生かし、ヒューリスティック処理を起こしやすくしているため、一概に「こちらの方が誘導しやすい」とは言えないのだ。
企業によっては、一部店舗でタッチパネル注文を取り入れている。タッチパネルからでもヒューリスティック処理を起こすことは可能なのだろうか。阿部氏は次のように持論を展開した。
「タッチパネルはその性質上、ハンバーガーやドリンクなどの種類別に分類されています。例えば、分類ごとのページの階層が深く、欲しい商品が見つけづらい設計になっていれば、面倒くささからヒューリスティック処理が起こる可能性もあります。階層が複雑になるほど、システマティックな処理が行いにくいからです。そのほかにも、クーポンが表示されたことで、購入しようと思っていた商品ではないものを選んでしまうこともあるでしょう。商品の配置、階層の組み込み方なども企業がバイアスを加えやすいポイントです」(阿部氏)
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