AIを活用して洋服を開発、どうなったか?:10万人以上のデータを使った(2/5 ページ)
AIを活用した商品開発にヒット事例が生まれ始めている。ファッション領域でパーソナルスタイリングサービス「DROBE(ドローブ)」を提供するドローブ社では、2021年の秋冬シーズンから10万以上の会員データを取り込んだAIを商品開発に活用。AIはファッション業界の商品開発にどんな価値をもたらすのか。
数千・数万のパターンから「売れそうな要素」を抽出
ドローブ社が自社開発したAIシミュレーターは、自社で展開するパーソナルスタイリングサービスの利用者データが活用されている。同サービスは、会員の好みのスタイルや体型、予算などに応じて、スタイリストが会員にマッチする商品をセレクト、その中から会員が興味を持った商品が自宅に配送されるもの。会員は自宅で試着後、購入・返品を選択できる。
会員は20〜40代の働く女性がメインで、会員数は15万人を超える。売り上げのうち、85%を占めるのが継続顧客の購入によるものだ。AIシミュレーターには会員と商品のスコア(相性度)が反映されているが、このスコアは会員の購買率ではなく、「会員の好みにマッチするかどうか」を基準にしている。
「購買率だけを基準にしてしまうと、どうしてもスコアが高い商品は無難なデザイン、ベーシックカラーにかたよったデータになってしまいます。イエローや赤などの差し色、やや個性的なデザインなどは、購入率は低いけれど継続利用には寄与します。よりチャレンジングな商品として捉え、新しい提案として会員の皆さまに勧めるためにデータに含めています」(山敷氏)
このデータを活用してAIが導き出すのが、「売れそうな洋服の構成要素」だ。袖、素材、柄、ディティール、テイスト、ネック(首周りのデザイン)、シーン(通勤 or カジュアル)といった複数の要素をかけ合わせた膨大な組み合わせの中から、会員の好みにマッチした「要素の組み合わせ」を抽出する。
高スコアの要素のパターンを導き出した後は、それに基づいてデザイナーがデザインし、人の感性によって、より細分化した素材やディティールなどを決めて、完成にいたるそうだ。このように商品開発のベースにAIを活用するのは、ドローブ社いわく業界初の試みになるという。
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