コロナ禍で得たものとは? JTBが「学び」で組織風土を変革する理由:「自律創造型人財」を育成(1/6 ページ)
旅行大手のJTBは、2018年から「キャリア改革」に着手。既存事業の外でも活躍し、自らキャリアを切り開く「自律創造型人財」の育成を目指す。コロナ禍による激変やそこで生まれた危機感を経て、スキル・キャリア開発を進める一方、組織風土の改革が今後の課題だ。
技術革新や消費動向など、経営環境が常に変化し続ける中、多様なスキルや先を見据えたキャリア観を持つ人材が、ビジネス成長のために欠かせない。
近年、経営環境の変化が特に大きかったといえるのが、旅行業界だろう。現在は、コロナ禍で落ち込んだ需要が急激に回復している。変化の波は大きく、先を見据えて自律的にキャリアを形成できる人材がますます求められていると考えられる。
業界最大手のJTBは、コロナ禍より前の2018年から「キャリア改革」に着手。旅行業にとどまらない「交流創造事業」を担っていくための人財(JTBでは人材の「材」を「財産」の「財」としている)育成に力を入れ、「自律創造型人財」の育成を目指している。どのような改革なのか。狙いや効果などについて、グループ本社人財開発チーム チームマネージャー 兼 JTBユニバーシティ事務局長の田中篤氏に話を聞いた。
経営統合をきっかけに着手した「キャリア改革」
キャリア改革に取り組むきっかけは、18年に実施したグループ15社の経営統合だった。
同社は06年、地域や分野ごとに事業会社を設立して分社化(JTB首都圏、JTB北海道など)。地域とより向き合うことで、地域交流ビジネスの拡大など一定の成果を得られたものの、課題も出てきた。グループが一体となる「One JTB」として取り組むことへのスピード感や、グループ会社間における見えない壁があったこと、所属会社による業務が限定的なため、社員のキャリア志向を反映した人事異動が思うようにできなかったことだ。
そこで18年、再びグループの組織を統合。一つの企業として始動するにあたって、組織文化を形成し活性化する「カルチャー改革」を始めた。働き方やダイバーシティなどと並ぶ、カルチャー改革の5本柱の一つが、キャリア改革だ。
その基本的な考え方として、田中氏は「社内外で活躍し続ける社員が自ら育っていく会社にすることが、競争力強化につながります。会社と社員が対等な立場で、『対話』によって成長のベクトルを合わせていくことを目指しています」と説明する。
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