新型プリウス、先代より売れていなくても「大健闘」といえるワケ:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(4/4 ページ)
プリウスの新型モデルは、5代目であっと驚く変化を遂げました。新しいプリウスは燃費が良いだけでなく、「格好良くて、よく走る」クルマになったのです。では、その新型プリウスは、どれだけ売れたのでしょうか?
逆風の中でも先代と同じ水準をキープ
また、そうした変化は、目標台数にも表れています。新型プリウスの販売目標は、4300台/月です。先代モデルは、その3倍近く多い1万2000台が月間の販売目標でした。それだけ、現在のプリウスの売れる見込みが小さくなっていると、トヨタ自体も考えているというわけです。
そんな前提の元、新型プリウスは、目標4300台に対して7681台を売りました。目標に対して実数は約1.8倍。先代モデルはどうかといえば、目標1万2000台に対して、販売2万1036台。こちらもやはり約1.8倍です。規模は小さくなっていますが、目標に対する結果としては、先代と同じ水準をキープしているのです。
しかも、新型プリウスには、さらなる逆風が吹いています。それが生産の停滞です。トヨタは今、コロナ禍以降のサプライチェーンの混乱の影響で、多くの車種で生産が滞っています。トヨタ公式Webサイトにある「生産遅延に基づく工場出荷時期目処の一覧」を見ると、プリウスは「詳しくは販売店にお問い合わせください」(3月20日時点)と表示されています。
他車種に「6カ月以上」という表示があることを考えると、新型プリウスは、それ以上に時間がかかることが予想されます。
注文したのに、クルマが届くのは半年先以上。そんな最悪な状況でも、目標をクリアしているのです。これは健闘と言っていいのではないでしょう。新型プリウスの、あっと驚く「一目ぼれするデザイン」と「虜にさせる走り」が功を奏したのではないでしょうか。
筆者プロフィール:鈴木ケンイチ
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
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