【4月施行】デジタル給与払い解禁、どんな業種で広がっていく? メリット・デメリットを解説:令和5年の法改正トリセツ(1/3 ページ)
労働基準法改正に伴い、令和5年4月1日からデジタル給与払いが可能になります。どのような業種で広がっていくのでしょうか? また導入によるメリット・デメリットを解説します。
連載:令和5年の法改正トリセツ
「労働基準法改正」「育児・介護休業法改正」「Cookie規制」など令和5年(2023年)もいくつかの改正法施行が予定されている。企業は法改正施行に向けて、どのような準備をしておくべきか?
令和5年4月1日から労働基準法改正に伴い、デジタルマネーによる賃金の支払いが解禁になります。現金払い、銀行口座・証券口座への振込に加えて、厚生労働省の指定を受けた資金移動業者の口座での給与の支払い・受け取りができます。特徴としては下記が挙げられます。
- 毎月1回は手数料を負担することなく受け取れる
- 企業側、従業員側両者の合意があった場合に限り、従業員の希望する給与の支払いが可能
デジタル給与解禁とはいいつつも、いきなり全ての企業で導入されるわけではありません。まずはフードデリバリーなどの配達パートナー、コンビニやスーパーなどアルバイト・パートタイマーを多く抱えている業種での広がりが期待されます。副業や兼業の報酬がデジタル払いになるといった事例も出てくるかもしれません。
本稿では、デジタル給与払いを導入したい企業が気を付けるべきポイント、導入条件や保証制度などについて、デジタルウォレットアプリを運営する資金移動業者であるKyashの代表取締役社長の鷹取真一が解説します。
キャッシュレス決済の浸透がカギ
デジタル給与払いに関する議論の始まりは、2015年ごろにさかのぼります。当初は銀行口座の開設が難しい外国人労働者向けの支援策として位置付けられていました。その後、政府が推進するデジタル化・ペーパーレス施策の影響もあり、外国人労働者だけでなく全ての労働者へと対象が広がりました。
厚生労働省は19年4月にデジタル給与払い解禁に向け、労働政策審議会の労働条件分科会で新しい制度案を提示しました。その後、一時的に議論はストップしたものの、21年に議論が再開。翌年10月26日、厚生労働省は労働政策審議会労働条件分科会にて、デジタル給与制度導入を盛り込んだ労働基準法の省令改正案を了承しました。
議論開始から現在まで、キャッシュレス決済は着実に普及してきました。15年に18.2%だったキャッシュレス決済比率は、21年には32.5%と増加しています。経済産業省は25年までにキャッシュレス決済普及率40.0%程度、将来的には世界最高水準の80.0%を目指すとしています。
キャッシュレス決済の浸透に伴い、資金移動業の実績は12年から集計が開始されました。この10年の間で登録資金移動業者数は2.5倍、年間取扱金額は1885億円から5兆円超と、資金移動業の市場は大きく拡大しています。デジタル給与解禁を期に、資金移動業者の口座における取扱金額も増加していくでしょう。
ただ、全ての資金移動業者がデジタル給与に参入できるわけではありません。厚生労働省に定められた要件を満たした上で申請をし、審査に通る必要があります。23年4月1日から資金移動業者からの指定申請の受付開始が予定され、申請承認後に企業や消費者は利用できます。現在の資金移動業者の登録数は23年2月末時点で84社となっています。
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