大規模オフィスを10分の1に縮小したLIXIL 「1周400メートル」に込めた思いとは:オフィス探訪(4/4 ページ)
東京・品川の住友不動産大崎ガーデンタワーに本社を移転したLIXIL。大規模だった旧オフィスから一転、新拠点では敷地面積を約10分の1に縮小し、オフィスを「コラボレーションを促進する空間」と再定義した。オフィスの移転理由から新オフィスに込めた思いまで、総務部部長の林崇志氏に話を聞いた。
あえて配線をなくしレイアウト変更は自由自在
床材や照明の違い、植栽などによって各エリアに緩やかな区切りがあるものの、執務スペースには壁が無いため近くで働く同僚の姿もしっかり確認できる。林氏は「旧オフィスでは他部署にいる従業員とコミュニケーションをとりづらかったので、そこを解消したかった」と理由を明かす。リモートワークで課題になりがちな帰属意識の低下や新入社員のフォローアップなどもしっかり対応できそうだ。
ここまでオフィスを歩いていて、ちょっとした違和感を覚えた。オフィスにあるはずの“あるもの”がないのだ。それは、電源コードや配線といったわずらわしいケーブル類。林氏に理由を聞いたところ「配置換えをしやすいようにあえてなくしている」という。社内ネットワークは、LANケーブルを使用せずにほぼ全てをワイヤレスにした。PCやモニターを利用する際は、従業員の困りごとなどをサポートする事務機関「庶務コンシェルジュ」でモバイルバッテリーを借りることも可能だ。
このフルオープンの設計を生かし、今後はオフィスレイアウトも柔軟に変更していくという。林氏は「オフィス移転してからまだ数カ月ですが、すでにWeb会議用のブースを増設したり、仕切りをなくしたりといったマイナーチェンジを実施しています。配線がないことで家具も簡単に移動できますし、今後も従業員からの要望があれば配置を少しずつ変えていこうと考えています」と話す。
林氏に今後のオフィスの在り方について聞いたところ「まだ答えはでていませんが、コラボレーションするためのクリエイティブな空間になっていくのでは」と思いをはせる。このコンセプトを今後、各地のオフィスに拡大したいと展望を語る。
「執務はPC1台あれば自宅やカフェでもできます。そうした中でオフィスの意味を考えると、チームを越えた横断的なコミュニケーションやクライアントとのやりとり、ブレストの場面で雑談交じりにアイデアを出すといったシーンで活用されていくと考えます。コミュニケーション、コラボレーション、この2つのキーワードが今後のオフィス構築で重要視されていくのではないでしょうか」(林氏)
大規模オフィスから10分の1へ縮小したLIXILのオフィス。単に“簡素化”したわけでなく、従業員のウェルビーイングを考えつつ、コミュニケーションの最大化を狙うレイアウトは、住まいに関わる同社ならではの新しい姿だろう。ここから生まれる新しいアイデアに期待したい。
著者プロフィール
太田祐一(おおた ゆういち/ライター、記者)
1988年生まれ。日本大学芸術学部放送学科で脚本を学んだ後、住宅業界の新聞社に入社。全国の工務店や木材・林業分野を担当し取材・記事執筆を行った。
その後、金属業界の新聞社に転職し、銅スクラップや廃プラリサイクルなどを担当。
2020年5月にフリーランスのライター・記者として独立。現在は、さまざまな媒体で取材・記事執筆を行っている。Twitter:@oota0329
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