男女の賃金格差がなかなか解消されない2つの理由 開示義務で風向きは変わるか?:令和5年の法改正トリセツ(1/2 ページ)
令和5年から「男女の賃金格差の公表」が義務付けられました。背景には、格差がなかなか解消されないという課題があります。なぜ格差はなくならないのでしょうか? その理由を解説していきます。
連載:令和5年の法改正トリセツ
「労働基準法改正」「育児・介護休業法改正」「Cookie規制」など令和5年(2023年)もいくつかの改正法施行が予定されている。企業は法改正施行に向けて、どのような準備をしておくべきか?
2022年7月に女性活躍推進法の厚生労働省令が改正され、労働者301人以上の企業に対して、男女の賃金差異の公表が新たに義務付けられました。情報公表は事業年度の終了後、おおむね3カ月以内に実施しなければなりません。3月末に事業年度が終了する会社であれば6月末までに公表することになります。
公表義務化の背景には、男女間の賃金格差がなかなか解消されないという課題があります。賃金格差の実態や一つの要因である女性管理職の少なさについて本稿で解説していきます。
縮まらない賃金格差
女性活躍推進法(16年4月施行)が成立してから7年が経過しましたが、依然として男女間の賃金格差は存在します。そう聞くと、扶養内で働く人や派遣・パートなどの非正規社員が多いという理由を挙げる人がいます。しかし正社員の平均年収で比較しても、男性348万8000円に対して、女性270万6000円と差があるのは事実です。
厚生労働省は、男女の賃金格差が解消されない最大の要因として「役職の違い(管理職比率)」を挙げており、次いで「勤続年数の違い」となっています。
帝国データバンクの調査によると、管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合は 9.4%(22年)と過去最高を更新したものの、前年比0.5ポイント増とわずかな改善幅にとどまり、依然として1割を下回る低水準が続いています。正社員でも管理職にならないと昇給は頭打ちとなります。労務行政研究所が22年に上場企業を中心に調査した職位別の賃金は次のようなものでした。
- 部長:1000万円台
- 課長:800万円台
- 係長:500万円台後半〜600万円台前半
- 一般社員:300万円台後半〜400万円台前半
部長の年収水準を100とすると一般社員は40程度にとどまります。女性の管理職が増えない限り、男女の賃金格差は解消しないでしょう。
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