「さようなら、またね」 八重洲ブックセンター本店の建物が“複雑”で面白い:水曜日に「へえ」な話(3/4 ページ)
東京駅の近くにある「八重洲ブックセンター本店」が閉店する。周辺エリアの再開発によるもので、いったん終了する形だ。本店の建物は「船」をイメージしているが、その歴史を取材すると、興味深い話がちらほら。どんな内容かというと……。
エスカレーターとエレベーターの謎
書店組合と八重洲ブックセンターは協議を重ねて、売り場面積を半分ほどに。地下1階から地上4階までの営業となったので、5階はギャラリー、6〜8階はテナントに貸していた――。勘のスルドイ読者はピンときたかと思うが、書店のお客の導線を考えれば「エスカレーターは4階までで十分」だったので、5階以上はつくらなかったのだ。
では、エレベーターはどうなのか。5階以上のフロアーを利用する人のために、1階は乗り降りできるようにした。ただ、書店のお客が1階のエレベーターを利用されては困るので、当時は壁を設置するなどして“そこにエレベーターがないように”見せた。つまり、5階以上で働いている人は、隠されたエレベーターを利用していたのだ。その後、全フロアーが書店になったことを受け、隠されてきた1階のエレベーターは姿をあらわし、現在の形となったのだ。
しかし、ここで疑問が残る。エレベーターは2階と3階に止まらないのだ。話がちょっとややこしくなってきたので、整理しよう。建物が完成した当初、エレベーターが止まっていたのは、1階と5階以上である。その後、書店が全フロアーになれば、すべての階に止まればいいのに、2階と3階だけ止まらない。なぜか。
その謎を解くために、同社の内田俊明さんに尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。「建物が完成した後に、このエレベーターをつくったんですよね。2階と3階も止めるようにしたかったのですが、建物の構造上どうしてもそれができなかった。というわけで、いまも2階と3階は乗り降りができないんです」と。
ふむふむ、それは仕方がない。では、足の不自由な人やベビーカーを利用している人は、どのようにして2〜3階に足を運んでいるのだろうか。業務用である。「関係者以外、立ち入り禁止」のところに入って、普段、搬入された本を運ぶために利用しているエレベーターを使わなけばいけない。店のスタッフにわざわざ声をかけなければ、そのエレベーターに乗ることできないので「建物自体が時代にあわなくなってきました」(内田さん)という。
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