スピッツの“チケット料金変動制” 「土曜1200円増」でもSNSで共感の声が集まるワケ:平日安くで分散化(1/4 ページ)
音楽バンドの「スピッツ」は2023年2月1日、同年6月から始まる全国ツアーのチケット料金に変動制を採用すると発表しました。平日の集客を増やしたいという狙いには、SNS上で多くの共感や賛成の声が上がりました。その戦略を、プライシングスタジオ社長の高橋嘉尋が解説します。
音楽バンドの「スピッツ」は2023年2月1日、同年6月から始まる全国ツアーのチケット料金に変動制を採用すると発表しました。需要が最も多い土曜公演の料金を高く、平日公演を安く設定し集客を分散したいという狙いには、SNS上で多くの共感や賛成の声が上がりました。
スピッツのツアーチケット料金はこれまで、曜日や座席を問わず一律9800円で販売してきました。それを今回、初めて複数の価格パターンを設定したことになります。本記事では、価格設定の狙いとその効果について解説します。
大胆な「値下げ」と部分的な「値上げ」で需要の標準化を狙う
今回発表された新料金体系は、平日→日曜・祝日→土曜と傾斜を付けた3段階で価格が変わるというものです。表の通り、ホール公演は平日が7800円、日曜・祝日8800円、土曜は9800円となっています。アリーナ公演も平日9000円、日曜1万円、土曜1万1000円と、同じく曜日によって3段階で設定されています。
これまでは一律9800円だったため、平日のホール公演は2000円の値下げ、日曜・祝日は1000円の値下げ、アリーナ公演も平日は800円の値下げとなりました。その一方でアリーナ公演の土曜は1200円、日曜・祝日は200円の値上げとなります。特筆すべきは、全45公演のうち値上げにあたるのは5公演のみで、実に8割の36公演は値下げが適用されたということです。つまりほとんどの観客にとって今回の価格改定は「値下げ」だといえます。
スピッツは、土日祝日に観客が集中するライブ事情への危機感があったことをオフィシャルWebサイト上で明かしています。また平日のライブの開演時間を遅らせるなど、価格設定と合わせて今後は平日公演にシフトする方針も表明しています。
つまり今回の価格設定は、週末に需要が偏る状況を緩和し、平日公演への流入を狙ったものです。その前提に立つと、値下げ分の利益を失いかねない価格設定の意図と課題解決への強い意志が伺えます。
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