トヨタが奮闘する燃料電池は、再び脚光を浴びるのか:高根英幸 「クルマのミライ」(3/6 ページ)
トヨタのFCEV「MIRAI」の販売台数がいまひとつである。直近の販売台数を見ると、月に24台だ。このままでは「近未来のカーボンニュートラル」は絵に描いた餅で終わってしまいそうだが、業界ではどのような動きがあるのだろうか。取材して分かったことは……。
これはかなり合理的なシステムなのではないか。開発したベンチャーの代表は元トヨタのエンジニアだけあって、そつのない作りで、利用者を呼び込めそうなものだ。
バッテリー交換式はクルマを資産と捉える人が多い日本ではなかなか普及させることが難しいが、水素カートリッジであればそれほど抵抗なく受け入れられるかもしれない。
そんな印象を受けたのがオートモーティブワールドでの水素関連での収穫だった。この時点では水素利用に新たな潮流が生まれているという実感はなかったのだ。
22年に設立されたばかりのベンチャー、アビリティが展示したFCEV。トヨタC+PodをベースにEVからFCEV化されている。燃料電池スタックは外部から供給を受けているが、注目はカートリッジ式の水素供給。1本9キログラムほどで、このFCEVでは約100kキロメートルの走行が可能。このシステムならカートリッジの本数を増やせば、より大型のモビリティにも対応できそうだ
ところが、その2カ月後、「スマートエネルギーWeek」という再生エネルギー関連の総合展示会を取材して、そんな印象はガラリと変わった。その中の「H2&FC EXPO」という展示会は、これほどまでに水素と燃料電池の自動車関連企業が日本に存在したのか(海外からの出展もあった)と思うほど、さまざまなメーカーやブランドが出展していた。
これまで燃料電池関連の部品を供給していたことを明らかにしていなかった企業も自動車メーカーからの了承を取り付けたのか、続々と部品や燃料電池スタック(平板状の「セル」を積層させた構造体のこと)を展示していた。
燃料電池スタックを展示する企業は中国、韓国などのアジア圏だけでなくドイツや米国からも出展があり、これほどたくさんの種類の燃料電池スタックを見たのは初めてだったので衝撃を受けた。
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